賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

もしもスラムダンクの舞台が軽音部だったら

木暮「あの先輩、すいません…。ナンバガのコピバンやりたいんですが…」 
 
赤木「オレも1年なんだけど」 
 
 
赤木「赤木剛憲ってんだ。いずれプロでデビューするつもりだ」 
 
木暮「ぷ…プロ…」 
 
赤木「君はなぜナンバガを?」 
 
木暮「僕は木暮公延ってんだ。僕は向井に似てるから…」 
 

 
女生徒「ごめんなさい。私、軽音部の小田君が好きなの・・」 
 
桜木「ガ~~~~ン!!!!」 
 

 
ルート弾きを制す者はバンドサウンドを制す!
 
 
 
 
スラップ王桜木!!! 
 
 
 
 
庶 民 弾 き っ ! 
 

 
 
晴子「ねーお兄ちゃん!ホントよ、スゴいんだから!! 
 
   桜木君っていってねー、身長は190近くあるかなあ」 
 
ゴリ「ふーん・・・」 
 
晴子「ベースは初心者なんだけどー、とにかくすごいのよ 
 
   スラップしようとして弦をはじいたら! 
 
   ね、どーなったと思う?どーなったと思う?」 
 
ゴリ「うーん、さあ?」 
 
晴子「弦切っちゃったのよー!ブチンて!信じられる!?」 
 
 

 
 
赤木「ウホホホホ-ッッ!」 
 
部員「出たぁ――――――!ゴリラタップ!」 
 

 
 
桜木「ふんぬ――――――っ!!!なんでオレばっかりスミッコで
 
   ルート弾きやってなきゃならねーんだ!も――ガマンできん!!!」 
 

 
 
彦一「アレ?桜木さん、そのベース、フォトジェニック…。 
 
   フェンダー使わらへんのですか?………ハッッ!」 
 
桜木「???。何だフェンダーって?高けーのか?」 
 
彦一「ア…イヤ… 
 
   (この人はビンボーなんや!フェンダーゆうたら、 
 
     ジャパンでも4~5万はするもんな…。)」 
 

 
 
田岡「で――いっ、何をしとるかきさまら! 
 
   そんな中古のフェルナンデスのアンプに
 
   フォトジェニック直結の奴にデカい面させおって!」 
 
彦一「それを言うたらあきません、監督! 
 
   ええやないですか、フォトジェニックでも…! 
 
   ビンボーがなんや…。」 
 

 
 
フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフン! 
 
フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフン!! 
 
 
おおスゲェー!! ものすごい手数! 
 
すべてのタイコとシンバルを同時にロールしてるみたいだ! 
 
まるで千手観音だ! 
 
あれは花道の人間ばなれした体力と瞬発力があるからこそ 
 
できる技だ!! まさに神業!! 
 

 
 
桜木君、ヘッドにスティックを置いてくる、その感覚よ!! 
 
ヘッドにスティックを......置いてくる・・・・・・・
 

 
 
桜木「おい店長。このヒスコレいくらだ?」 
 
店長「へっ?」 
 
桜木「中古だから30円にしろ」 
 
店長「あいつはきっと大物になる…」 
 

 
 
宮城「たまたま来た入部説明会で、初めて見たんだあの娘を。もうホレてたよ… 
 
   速攻で入部した。バンドに命かけることに決めた 
 
   オレがバンドを有名にして…CD売って… 
 
   それで彼女が笑ってくれれば最高さ 
 
   …………ちっ…てめーなんかにつまんねー話を…」 
 
桜木「ワカル」 
 

 
 
木暮「赤木君?コードストロークってつまんないね…」 
 
赤木「最初はな」 
 
木暮「赤木君?Fってこんなにキツイの?」 
 
先輩「コラア 木暮!指つるな!!」 
 
 

 
メンバー「終わったか」 
 
メンバー「これでオレたちも引退か…」 
 
メンバー「でも今までで一番いいステージだったよな」 
 
赤木「だからもう泣くなよ木暮」 
 
木暮「うん(号泣)赤木…オレこのまま辞めたくない ナンバガが好きなんだ…」 
 
赤木「ああ・・・高校で全国制覇だ」 
 
木暮「ああ」 
 
 
木暮「今日 関と大石が退部届出したらしい」 
 
赤木「そうか… これでとうとう俺達の代は2人だけってわけか…最初はあんなにいたのに」 
 
木暮「これじゃ全国制覇どころか…部の存続すら危ないよ」 
 
 
木暮「新メンバーが7人… マネージャーが一番元気だな」 
 
彩子「さあ ファイト!」 
 
赤木「こいつらを鍛えていくしかあるまい」 
 
木暮「何人くらい残るのかな…」 
 
宮城「2人くらい残りゃいい方じゃないすか」 
 
木暮「…お前は?」 
 
宮城「いずれ神奈川№1のヴォーカリストと呼ばせてみせる。 
 
   今はただのグッドシンガーですけどね。」 
 

 
 
三井「バッカじゃねーの!?何が一緒にだバァカ!! 
 
   ギターなんてもう俺にとっちゃ思い出でしかねーよ!! 
 
   ここに来たのだってお前らを笑いに来ただけだ!! 
 
   いつまでも昔のことをゴチャゴチャゆーな!! 
 
   メタルなんて単なるメタヲタどもから金を巻き上げるためだけの活動じゃねーか!! 
 
   つまんなくなったからやめたんだ!!それが悪いか!!」 
 
ガシッ 
 
三井「!!」 
 
木暮「何が日本のイングヴェイだ………」 
 
三井「あぁ!?」 
 
木暮「何がギターヒーローだ!! 
 
   何が『高崎晃はクソ』だ!! 
 
   お前は根性なしだ……三井…… 
 
   ただの根性なしじゃねーか…… 
 
   根性なしのくせに何がメジャーデビューだ… 
 
   夢見させるようなことを言うな!!」 
 
三井「木暮……!!……昔のことだ!!もう関係ねえ!!」 
 
宮城「三井サン」 
 
三井「宮城」 
 
宮城「一番メタル黄金期にこだわってのはアンタだろ…」 
 
……ゴン…ゴン… 
 
安西「私だ…開けて下さい」 
 
ドキッ… 
 
三井(あ…あ…安西先生……) 
 
安西「おや」 
 
三井「安西先生…… 
 
   様式美メタルがしたいです……」 
 
 
 
 
諦 め た ら そ こ で ラ イ ブ 終 了 で す よ ? 
 
 

 
 
赤木「桜木!!いいから音を止めるな!!」 
 
桜木 ボボボン ボッボボ  ボッボボン……    
 
!! 
 
越野「ターンアラウンド……!?」 
 
  「あの赤い髪いつの間にそんな技を!?」 
 
村雨「野郎……」
 

 
 
赤木「俺も昔はドラムソロが苦手だった!!」 
 
三井「そう こいつのは笑えた。本当に下手でな」 
 
流川「ほう」 
 
赤木「うるせぇ!!やめさすぞてめえ!!」 
 
三井「な・・あんまりだっ!」 
 

 
桜木 「ルカワはソロもとるしコーラスも入れるし…ひーきだ!」 
 
赤木 「お前のちーーとも音程の合ってないコーラスには期待しとらん。それよりもルートだ! 
 
    …お前のダウンピッキングには少し期待している」 
 
宮城 「ちゃんと合わせろよ」 
 
流川 「お前のミストーンにもけっこう期待している(ボソッ)」
 
 

 
 
藤間「花形、テンポを250に上げろ!!オルタネートならそいつはリフを弾けない!!」 
 

 
 
牧「藤真はレコーディングではプロデューサーだ。 
 
  自分を抑え冷静でなくてはならない。 
 
  奴はステージに上がったときだけプロデューサーの重責から開放される。 
 
  ボーカリストとしての奴はクールとは程遠いぜ。」 
 
藤真「っしゃあ!!」 
 

 
長谷川「速弾きをなめるなよ三井」 
 

 
桜木「・・・君、日本人?」 
 
牧 「ん?」 
 
清田「バッ、バカヤロー!!」 
 
桜木「おい、野猿!ズルイぞメンバーに黒人連れてくるとは!!」 
 
清田「バカか、てめーは!牧さんはこれでもれっきとした日本人だ!!」 
 
桜木「・・・・・何が日本人だ!ダマされるか!!」 
 
牧 「おい桜木・・・・・・赤木の方が黒人っぽいぞ」 
 
赤木「牧!!」 
 
神 「気にしていたのか・・・」 
 
 

 
 
桜木、ピックを投げ捨て、親指でベースをダウンピッキングし始める。 
 
清田「おい!赤毛ザル!なんだその弾き方は!マジメにやれ!」 
 
桜木「うるせー野猿!黙って見てろ!」 
 
清田「ちっ、ドシロートめ。人の忠告を…」 
 
高頭「そうでもないぞ…」 
 
宮益「え?」 
 
高頭「かつてあの構えからダウンピッキングをし続けた男がドリフターズにいる! 
 
…奴はそれを知っているのか…?」 
 

 
 
神「神宗一郎です。ドラムです。よろしくお願いします。」 
 
高頭「(大丈夫か・・・こんなヒョロヒョロした子が・・・)」 
 
 
 
特にバスドラが速い訳でもない 
 
テクニックもふつう 
 
センスという点では牧や今年の清田とは比べものにならなかった 
 
案の定練習で牧や高砂に何度も何度もダメだしされる神にドラムはとうていムリだと 
 
私は言った・・・高校生にはショックな言葉だ 
 
高頭「(くやしくないのか・・・?)」 
 
そうではなかった 
 
その日から練習が終わったあと一人残って黙々とスケール弾きの練習をする神を見て 
 
神が何も持たないプレイヤーではないことに私は気づいた 
 
あいつは内に秘めた闘志と・・・なめらかなフィンガリングを持っていた 
 
 

 
 
清田:神さんナイス!! 
 
    レガートの天才!! 
 
桜木:………… 
 
彩子:なんて綺麗で柔らかなフィンガリングなの… 
 
    この激しいライブの中でそこだけ時が止まったような… 
 
    あまりの滑らかさに鳥肌が立ったわ 
 

 
 
高頭「ギタリストには確かに才能も必要だろう… 
 
   GIT MASTARSジュニア部門で受賞した 
 
   三井にはその才能があるかもしれん…… 
 
   だが本物のギターヒーローは練習によってのみ作られる!! 
 
   あくなき反復練習だけが速さと正確さをアップさせるのだ!! 
 
   神はあれから1日500回のスケール弾きを欠かした事はない!! 
 

 
 
高頭「よろしくお願いします!」 
 
田岡「相変わらずハッパ臭えな」 
 
越野「な・・なんか因縁の二人なんすか・・!?」 
 
田岡「高校の頃からだ。 
 
   オレが2年の時奴は「恐怖の新星」と言われハマのライブハウスではすでにスタープレイヤーだった。 
 
   一方オレも自慢する気はないが「横須賀に田岡あり」と言われるギタリストだった。 
 
   二人はライバルだった。 
 
   そう・・今でいえばオレがジョー・サトリアーニ、高頭がスティーヴ・ヴァイみたいなもんだ」 
 
陵南「悟り兄?・・ヴァイ・・?」 
 
仙道「ウソだ!」 
 
魚住「ウソだ!!」 
 
福田「ウソだ」 
 
田岡「ほっ・・本当だ!!」 
 
彦一「ウソや!!」 
 

 
 
仙道「さあいこーか」 
 
観客「仙道がメロトロンだっ!!」 
 
高頭「奇策に出たか…田岡先輩…」 
 
 

 
 
藤真「アイソレーション・・・」 
 
アイソレーション---ソロの能力の高いギタリストを上手に孤立させることによって 
 
目立たせるステージングの事。 
 
牧「綾南はそれほどまでに福田のソロに自信を持っているのか・・・」 
 
 

 
 
田岡「日本の片田舎では、都会と違って街中にリア工でも毎回
 
   通えるほど安いスタジオなど そうは見かけない… 
 
   バンドの合わせ練習をしたい高校生にとっては、 
 
   もし学校でできなければやりたくてもやれないのが現状だ 
 
   部活禁止処分を受けた福田は飢えていた 
 
   ギターへの飢え アンプを通した大爆音への飢え 
 
   バンドの他の楽器とセッションすることへの飢え 
 
   ライブへの飢え 
 
   福田のバンド活動への飢えが…それゆえの粘り強い
 
   プレイがバンドにガムシャラな勢いをもたらす 
 
   それは仙道にすらできないことなんだ」 
 
 

 
 
福ちゃん軍団「いーぞォフクちゃん!!」 
 
福ちゃん軍団「陵南のトニーマカパインだ!!」 
 
福ちゃん軍団「フクちゃん!!」 
 
桜木「うるせーぞコラァ!!」 
 
 

 
魚住「ウチには他にもソロを取れる奴らがいる。 
 
   オレが歌もコードを乗せるのもやる必要は無い。 
 
   オレはバンドの主役じゃなくていい。 
 
   話の主役であれば、、、」 
 
桜木「おい」 
 

 
 
ライブハウス店長「また来るぞー!気をつけろ!」 
 
おっちゃん「飛び込め。寛ーーー」 
 
グワシャッ! 
 
店長「…いつまでのしかかってるんだ!」 
 
ボキボキッ! 
 
おっちゃん「あちゃ!またやった! 
 
ダメだろヒロシ、いつまでも客にのしかかってたら。ありゃあ骨折れるわ。」 
 
寛「へへ…おっちゃん。 
 
オレが客席にダイブすると…5~6人床に転がってるだろ。 
 
それを上から背中で感じるのが好きなんだ。」 
 
 

 
ゴリ「ばかたれがぁ!何のために特訓したと思ってるんだ!」 
 
桜木「いや、ヘッドバッキングは今朝も200往復やって・・・ 
 
なんかちょっと気絶してたらよ・・・ 
 
そのまま・・・」 
 
小暮「誰にも言われないのにヘッドバッキングやったのか、桜木。」 
 
ゴリ「気絶するなばか者」 
 
 

 
 
安西「さっきのテープ聴いて自分のおかしいところに何か気づきましたか?」 
 
桜木「あれはおれじゃねぇ」 
 
野間・大楠・高宮「おめーだ」 
 
桜木「(おかしいところだと… あれじゃいい所をさがすほうが難しいぜ…)」 
 
「……初心者なんだからおかしくて当然。むしろ変なクセがついてなくていい 
 
    これから正しい弾き方を身につけるんですから」 
 
桜木「♪ぼんぼぼぼぼぼぼぼぼぼ~ぼぼぼ」 
 
安西「ふむ ダウンピッキングはなかなか」 
 
桜木「! 当然だ!天才の上に特訓もしたからな!!」    
 
安西「基本的にはこれと同じですよ」 
 
桜木「ぬ…!?」 
 
 

 
 
桜木「オヤジ・・・・・何をやったらいいんだ?」 
 
安西監督「ほっほっ」 
 
    「コピー2万曲です」 
 
桜木軍団「なにいーーーっ!?」 
 
桜木「2万で足りるのか?」 
 
桜木軍団「なにいーーーっ!?」 
 
 

 
入部して以来、ルート弾きやダウンピッキングの練習
 
など地味な練習ばかりさせられてきた桜木にとって 
 
ベースリフ作りの練習は楽しかった。 
 
 

 
客「店長ー、62年製ジャズベ売ってくれよー。 
 
そしたらフェンダーのビンテージコレクションが完成するんだ」 
 
店長「ダメダメ。これは売り物じゃないし、弾かない人には売らないの」 
 
客「店長だって弾いてないじゃん」 
 
店長「僕はちゃんと弾いてるよ」 
 
その直後そのジャズベは桜木に30円で買われるのであった 
 
 

 
桜木「店長、このベースネック細くて折れちまったから返すぜ。」 
 
店長「あーーー、’62!!」 
 
桜木「細せーんだ。」 
 
 

 
 
チエコ楽器店店長「いいベースがあるよ、桜木君。」 
 
店長、ギブソンのEB―1を取り出す。 
 
店長「赤と黒…湘北の色だ」 
 
桜木「イカスやんけ店長~~~!」 
 
晴子「カッコイイ!」 
 
桜木「店長!これはオレの気持ちだ!とっといてくれ!」 
 
店長「いいよ別に、あきらめてるから…。(…百円…)」 
 
 

 
──当時の安西流はガチガチのシステマチックなジャーマンメタルで有名だった 
 
  インディーズ界きっての名プロデューサーは、 
 
  “白髪鬼”の異名をもつスパルタコーチとして知られていた。 
 
安西「谷沢!」 
 
谷沢「あ~、またデビルに怒られるよ…嫌だなあ…」 
 
安西「谷沢…お前なぁんか勘違いしとりゃせんか? 
 
   お前の為にバンドがあるんじゃねえ。バンドの為にお前がいるんだ! 
 
   …わかったのか?わからんのか?どっちだ?」 
 
谷沢「はい!!わかりました!!」 
 
安西「よし、じゃあペンタトニック200回やってこい」 
 
谷沢「ぐ…!!」 
 
安西「わかったのか?わからんのか?」 
 
谷沢「は…はい!!わかりました!!」 
 
 

 
メンバー1「プロデューサー、谷沢には特に厳しいな。」 
 
メンバー2「期待の表れだよ。あいつの潜在的な能力に対しての。 
 
      それだけに今のうちに、基礎的なことをきっちり身につけさせる計画なんだよ。 
 
      基礎がないとどんな才能でも開花することはないからな。」 
 
谷沢   「(…指イテェ…)」 
 
安西   「あと100回増やすか?」 
 
谷沢   「………………!!」ピロリロリ~♪!! 
 
安西   「よし、プラス50回にまけてやろう。」 
 
谷沢   「…やめてやる!!オレがやりたいメタルはここにはねえ!! 
 
      …イギリスだ!!オレが憧れたイギリスのNWOBHMに挑戦するときが来たんじゃないのか!? 
 
      イギリスでオレのプレイがどこまで通用するか… 
 
      すぐには通用しなくてもいい。でも1年か2年… 
 
      本場のへヴィーメタルにもまれればきっとデビルの想像も及ばないくらいの 
 
      ギタリストになれるはずだ!!いや絶対なってみせる!!自信はある!! 
 
      イギリスでオレの才能を試すんだ!!」 
 
 
 
それから約1年後、一本のビデオテープが送られてきた。 
 
へヴィーメタルのライブが収録してあった。 
 
メンバー1「あっ、でた!あれだ谷沢!!」 
 
メンバー2「えっ、あれか!?…TATOOなんかいれてるよ」 
 
メンバー1「でも、がんばってるじゃねえか。あいつ1人だけ日本人で…。」 
 
メンバー2「ああ、見直したぜ…!!」 
 
 
 
安西   「…まるで成長していない…。誰か谷沢に基礎を教える人間はいるのか…? 
 
      あいつ英語はどうなんだ?バンドメンバーとうまくコミュニケートできていないようだ。 
 
      そもそもこのバンドは何だ…。それぞれが勝手なプレイばかりだ。まるでまとまっていない。 
 
      いったい指導者は何をやっとるんだ!?これじゃ谷沢はダメになる…!! 
 
      帰ってこい、谷沢!!わしのプロデューサー生活の最後に、 
 
      お前を日本のマイケル・シェンカーに育てあげるつもりだったんだ!!」 
 
 
      タッピングのうまい早弾きギタリストといってもそれは日本でのこと 
 
      自分より早くて技術が優れたギタリストを彼は何度も目の当たりにした。 
 
      さらに高校時代、飛び道具的な応用プレイばかりで、基礎をおろそかにしていた彼には、 
 
      自身が期待していたほどの急成長は望むべくもなかった。 
 
 
 
安西「何をしとるんだ、谷沢……」 
 
谷沢が渡英して5年目の朝─── 
 
《英で邦人ミュージシャン薬物過剰摂取で死亡》 
 
 谷沢龍二さん(24) 
 
 
母 「安西先生…」 
 
安西「は…」 
 
母 「息子のアパートにあったものです。日付は4年前になっています。」 
 
安西「手紙…?」 
 
母 「出せなかったんでしょう…」 
 
 
谷沢「安西先生──── 
 
   いつかの先生の言葉が近ごろ、よく頭にうかびます。 
 
   『お前の為にバンドがあるんじゃねえ バンドの為にお前がいるんだ』 
 
   ここでは誰も僕にソロパートをくれません。 
 
   先生やみんなに迷惑をかけておきながら、今おめおめと帰るわけにはいきません。 
 
   いつか僕のプレイでみんなに借りを返せるようになるまで、頑張るつもりです。 
 
   へヴィーメタルの国、イギリスの────── 
 
   その空気を吸うだけで僕はエアーギターが弾けると思っていたのかなあ……」 
 
 

 
 
岸本「オマエ、一度もまともにリズムキープ出来てへんやんけ。オレ、
 
    お前のベースに合わせてモッシュに行こうとする意味あるんか?」 
 
   ホントはお前、ソロパートすら持たせてもらえんヤツとちゃうか?」 
 
桜木「リョ-ちん!オレに振れ~!」 
 
   後悔するなよ、チョンマゲ!この天才を本気にさせたことをな!」 
 
   聴け!オレの合宿ピッキングを~!」 
 
♪vГ~fёk~ыf~~g~Ю~fДm~♪ 
 
洋平「・・・・戻ってる。合宿の前に。」 
 
客席「ぶわははは!なんだそりゃ~!!」 
 
清田「情けねぇ…。オレたちはあんなのと一緒に対バンを…」 
 
安西(ちょいちょい)←手招き 
 
そして脱退が告げられた。 
 
桜木「ちがうんだ~っ!」 
 
岸本「わはは。何がちゃうねん」 
 

 
宮城「こんな低い音に阻まれてどーする。 
 
ハイトーンシャウトこそがチビの生きる道なんだよ!」 
 
 

 
南       「お願いします」 
 
岸本      「北野さんがクビやなんて…」 
 
所属レーベル社長「北野プロデューサーももう年や。 
 
         それにあの人のプロデュース方針はもう古いのとちゃうかな」 
 
岸本      「なっっ!!」 
 
南       「そんな事ないですて!!」 
 
社長      「君らにはこんな事言いたくないが… 
 
         君らのバンドには一番投資しとんのや。 
 
         充実したスタジオ環境に、海外レコーディング…。 
 
         それでインディーズの全国チャート初登場8位ではどうにもならんやろ。 
 
         私は経営者なもんでね…」 
 

 
 
金平「これでわかったろう! シメる所をきっちりシメればこの位のテンポの曲でも 
 
   十分客はノれるんだ! さあ次の曲もこの調子だ!」 
 
岸本「だあっとれ」 
 
南 「次の曲BPM190でいくで 暴走や」 
 
金平「ちょ、ちょっと待て南! 上手くいってるじゃないか 曲調を変える必要はない!」 
 
岸本「あれは対バンのペースや そやから盛り上げるのに時間がかかるんやろが」 
 
南 「まだ他のバンドがゆっくり進めるなら ベース⇔ギター⇔ツーバスドラムの黄金のトライアングルに 
 
   横からのサックス トランペット トロンボーンで2ビート バシバシつっこめよ 音外したらしゃーないわ」 
 
金平「これは全国大会だぞ!優勝しなきゃ終わりじゃないか!」 
 
岸本「もちろん勝つためや 俺達のバンドはスカコアや BPM180以上の曲で優勝するんや」 
 
金平「…寝言はよせ それじゃメジャーになった時に困るってのはKEMURIのときに証明ずみ…うっ!」 
 
南 「殺すぞお前」 
 

 
 
「最初はコピーのつもりやったんです、練習用の… 
 
 プロの曲を弾き込めば本番で使える自分のテクの引き出しの数が増える、 
 
 まさか自分たちの曲でそのフレーズを使うつもりはなかった 
 
 それが初めてモロにギターソロのフレーズをパクってしまった 
 
 自分の初めての単独ライブやった 
 
 そして客は元ネタなんか知らんからそのライブは盛り上がった 
 
 パクッたから成功した 
 
 自分の中で正当化された…オレには客にウケる事より優先するものはないからです 
 
 その日からオレに変なアダ名がついた 
 
 北野さんも聞いたことあるかも知れませんね… 
 
 『パクリ王 南』……」 
 
 

 
 
北野監督「俺のスカコアはDQN向けや。 
 
     リア工のいるグループでできることなんか限られとる。 
 
     まともにやろう思てもムリや。 
 
     そやから豊玉の曲はアップテンポ8にミディアム2くらいのもんや。 
 
     そら批判もあるけどな、そんでええのや。…その方が 
 
     DQNどもがロックを好きになってくれる…。 
 
     南…コア系の音は好きか…?」 
 
 

 
 
宮城「うわっすげー 凄い弾き方するなこのアジア系べーシスト 3本も指使って弾いてやがる」 
 
安西「彼は今も在籍してるよ ジョン・ミュングだ」 
 
(…オレがコイツを完コピすんのかよ…) 
 
木暮「全盛期の中心メンバーが1人残ってるのか ベースをヘルプしてみんなでしのぐか…」 
 
安西「メンバーは3人残ってます ギター、ジョン・ペトルーシ」 
 
部員「す…すげえ早さ!!」 
 
安西「でも巧さとセンスも持っている プログレからメタルまでこなすらしい」 
 
桜木(…ゴリと似てるな 顔が …髭ゴリ) 
 

 
 
赤木のビデオで研究中 
 
沢北「もう見つけた」 
 
河田「なんだ?言ってみろ」 
 
沢北「まずフィルイン。タムの数も多いし、Wスネア・2バスだけど、 
 
実際叩いているのはバスドラとフロアタムとスネア一個くらい。」
 
河田「うん。オカズの種類もワンパターンだしな。」 
 
沢北「そこへ行くと、河田さんはゴツイ顔の割にオカズのパターンが豊富なので大丈夫。」 
 
河田「ゴツイ顔? 
 
てめえ、顔とフィルインのパターンと何か関係あんのかコラァ! 
 
お前、山王工業始まって以来の二枚目キーボーディストとか言われてチョーシこいてんべ!?」 
 

 
 
チャートに名を刻め~~~、お前等!!  ハイ、 
 
チャートに名を刻め~~~、オマエラ! 
 
 

 
いいか……客の9割はビジュアル系のファンだ 
 
おれたちゃ対バンか 
 
おもしれえ 
 
 
    メ タ 厨 見 参 ! ! 
 
 

 
三井「オレからを早弾きとったらもう何も残らねえ…!! 
 
   もうオレには…1・2弦しか見えねえ……!!!」 
 

 
 
先輩「お前ツーバスできるか?ツーバス」 
 
ゴリ「はあ・・・」 
 
 ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴッ!! 
 
部員A「おおーーーっ!!スゲエ!!」 
 
部員B「スゲエッ!!1年とは思えねえ!!」 
 
ゴリ「そーすか」 
 
三井「こ・・・こいつは・・・!?」 
 

 
 
部員「赤木のドラムソロだ!」 
 
ドンドンドカドーコドーン 
 
部員「うわぁ、ハシったり、モタったり・・・」 
 
赤木は当時リズムキープ゚がヘタだった。 
 
 

 
部員「昨日もさ、メタリカが表紙のふっるいBURRN!見せながら言うんだよ…。 
 
『これがオレ達の原点であり…最終目標なのだ…』」ガラッ 
 
部員「赤木!」 
 
ドサッ! 
 
部員「きょ……強要するなよ、メジャーデビューなんて。 
 
ここは神奈川県立湘北高校だぜ。取り立てて何の取り柄もないフツーの高校生が集まる所さ。 
 
お前のドラムだって速いだけでヘタでYOSHIKIみたいだから翔陽にも海南にも行けなかったんじゃねーか。 
 
海南だって雲の上の存在なんだ。 
 
お前とメタルするの息苦しいよ。」 
 
 

 
 
木暮「何やってたんだ赤木!!みんなとっくに帰っちゃったぞ!! 
 
   バスドラで16刻んでくれよー!!このリズムマシン、ちゃんとフィルインしてくれないんだ!!」 
 
赤木「わはは!!それはお前のリズムギターの刻みが下手だからだ。」 
 
木暮「何ーっ!だから練習してんだろーっ。くそーっ!」 
 
 

 
三井「静かにしろい この音が…… 
 
キュイィィィィィィィン!(チョーキング) 
 
オレの指を甦らせる 何度でもよ」 
 
 

 
グッドリズム!! グーッドウィドゥム!! 
 
 

 
 
河田「…ズイブン長い間ダウンで引き続けるんだな。 
 
    そして、ダウンだけで16を丸1曲刻み続けるなんて並のスナップ力じゃできねえ。 
 
    もっとも誰もそんな事見ていねーがな…」 
 
 

 
赤木(バンドにいいリズムをもたらしてるのは桜木だ 
 
   奴がルート音をことごとく拾ってくれるからだ 
 
   晴子…お前が見つけてきた変なパンクスは 
 
   …このバンドに必要なべーシストになったぞ…) 
 
 

 
流川「・・・・・」 
 
赤木「何だ流川・・・・・・?」 
 
沢北「ピッキングが弱いぞ!!」 
 
晴子「危ない!」 
 
キューピロピロ ぎゅぃぃぃぃぃぃん 
 
仙道「お前はセッションの時もソロのときもプレイが同じだな・・・・」 
 
流川「・・・・・・・・?」 
 
仙道「ソロのトーナメントでもあればお前に勝てるやつはそういないだろうタブン 
 
   でも実際のライブでも観客が受けるかと言ったら・・・・・・ 
 
   そうでもない 
 
   お前はその才能を生かしきれてねぇ」 
 
流川「なに・・・・・・・・!」  
 
観客「3弦が切れたぞ!!」 
 
  「あと4本!!」 
 
堂本監督「なす術がなくなったか」  
 
 

 
安西「桜木君……白状します。 
 
   君の腱鞘炎にはすぐに気づいていた。 
 
   気づいていながら演奏を止めさせなかった。 
 
   ……止めさせたくなかった。 
 
   どんどんよくなる君のプレイを見ていたかったからだ……。 
 
   プロデューサー失格です。 
 
   あと少しで一生後悔するところでした」 
 
桜木「オヤジの栄光時代はいつだよ…。 四人囃子の時か? 
 
    オレは………オレは今なんだよ!!」 
 
 

 
記者「はい、いきますよー。これバーンの表紙にしますからね!みんないい顔して!! 
 
相田「まだ、わからないでしょ。表紙は!!」 
 
記者「いーや、広瀬編集長に僕が説得します!なんせ酒井社長が認めた正統派メタルなんですよ 
 
   このギグを見たことが僕のメタラー人生を変える気がする。これからは真面目に・・・。」 
 
桜木「早くしろ~~~!!」 
 
記者「あ、ごっめ~~~ん、いきますよ。みなさんロックンロールしてぇ~~~。」 
 
・・・しかし、この写真がバーンの表紙に使われることは無かった。 
 
ゴリゴリの様式美アルバムに全てを出し尽くした湘北は 
 
続く3枚目ではウソのような駄作を作ったのだ。 
 
 

 
 
(晴子の手紙) 
 
桜木君へ 
 
背中の具合どうですか?こちらでは新しい湘北軽音楽部がスタートしました。 
 
お兄ちゃんはトイズ・ファクトリ入社の話しがなくなり・・・ 
 
もともとの正統派メタル・バンドを結成することになりました。 
 
ソロで様式美をやると言っていたのは三井さん 
 
一番寂しそうだったのも三井さんでした。 
 
私の事を少し―――マネージャーになったの。 
 
彩子さんに誘われたの。再び様式美を目指す軽音楽部には一人じゃ足りないって・・・。 
 
・・・これから毎週メタル・シーンの状況とか手紙で送ります。それが私の最初の仕事です 
 
P.S.流川くんがオズフェストからもうすぐ帰ってくるの☆ 
 
桜木「ぬっ」 桜木の前に流川現る 
 
桜木「オズフェスト~~~!!」 流川「む・・・」 
 
バ!! 流川がオジ―のTシャツを見せる。 
 
桜木「オジー・・・!!性格最悪!! 
 
   おのれ流川、俺の補欠で選ばれたくせに!!」 
 
 

 
(晴子の手紙の続き) 
 
頑張って  桜木君 
 
このリハビリをやり遂げたら 
 
待ってるから――― 
 
待ってるから――― 
 
大好きな 
 
へヴィ・メタルが待ってるから 
 
 
 
  湘北高校軽音楽部【完】