賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

’80(前半)・・・初期三部作の頃

  • 最初から、なんか、閃光というかそんな確かなものを感じたんだ。ステージに上がって、ギターを弾きながら、あのDコードを聞いたときに何かに打たれたようだった。あのDコードを聞いたとき、まるでバイクにエンジンを入れた時みたいな、特別な衝撃があったんだよね。

 

  • 俺がいちばん大きな声が出たんだよ。グループ結成の頃、俺はリード・ギターでシンガーでソングライターだった。初めは誰も何も言わなかったよ。だけどしばらくしたら、連中は俺をリード・ギターからはずし、リズム・ギターに変えさせた。またしばらくするとリズムギターをやめさせて歌に専念させた。で、今度は俺を歌からはずしてマネージャーにしようとしたね。だけど俺はシンガーにしがみついた。傲慢。それが理由だったかもね。

 

  • このバンドは止まったりしない。僕たちの出所を知ってるだろ、僕たちの出身を知ってるだろ、子供が石炭を食べたことを知ってるだろ。あそこからここまで来たことはすごいことだって認めるだろ。それに比べれば、ここからアメリカでゴールドディスクを貰うなんて何でもないさ。小さなステップに過ぎない。ぼくは真剣さ、長いことイギリスのバンドが手にしたことのないくらいの成功をアメリカでしてみせる。

 

  • どうしてかって? 音楽とは人生を祝うものだからさ。万人のための現代アートの一様式みたいなもんさ。……U2が認められることは重要だと僕は思っている。なぜなら僕たちはそういうことに反対して立ち上がっているわけだから。ポップ・カルチャーが前向きに立ち上がっているわけだから。

 

  • もし僕たちがナンバー・ワンになれば、ラッシュなんか居場所がなくなるよ。僕たちの歌がラジオに流れれば、シーナ・イーストンなんて失業するよ。あんな工場製品みたいなのは。彼らだっていい人たちなんだろうけど、あの態度が嫌なんだ。まるでビーンズの缶詰みたいに音楽の缶詰を作って、綺麗に飾って出荷するみたいなさ。

 

  • ありふれたことに聞こえるかもしれないけど、オーディエンスに対する僕たちの信頼は絶大なものだということをわかってほしい。僕たちとオーディエンスとの関係で大切なのはこのことさ。

 

  • 成功することとそれを確立させることが大切なんだと思う。常に登らなくちゃ。登ることが習慣になるくらいに。高いところにいける螺旋形でなくちゃいけない。

 

  • シニカルになるのはこの世で一番簡単なことだ。時々、自分の中にそれがやってくるのがわかると、踏みつぶさなくちゃいけない。わかるものなんだよ。

 

  • 思い上がっていると聞こえるのは嫌だけれど、真実は諸刃の剣でね。シンガーが本当に心で感じているものを歌っているかそうじゃないかはすぐわかる。全然違うよ。世の中にはもっともらしいポップ・ソングが氾濫していて、ちょっと泣けてしまうこともあるけれど。「ラッシー」とか「大草原の小さな家」を見るようなものでね。わかるだろ、本物の感情じゃない。表層にある感情なんだ。本当の真実は、シンガーが彼の内部から来るものを語り始めたときに現れてくるもので、それは、たちまち君の内部に影響を与える。それが偉大な音楽なのであって、ナイスな音楽なんかとはまるで違うよ。

 

  • 「ナイス」ってのは実にいやな言葉だ。エレベーターとかスーパーマーケット用の音楽だね。買い物したり、上がったり下がったりする分にはいいかもしれないけど、それ以上のものがほしいよ。間違ってるかい? 音楽にそれ以上を求めるのは間違ってるかい?

 

  • みんなポップに幻滅を感じ始めてるんだ。BGMにもうわべだけのものにも。まるで何年もスマーティを食べ続けてきた人が、突然部屋に散乱している包み紙を見て気分が悪くなるようなものだよ。

 

  • 自分たちが何であるか知っているよ。このバンドにはとても特別なものがある。サウンドはある意味では古いかも知れないが、俺たち自身の自然なものだ。他のどのグループの真似でもない。俺たちの歌は違うんだ。本質的な感情を持っている。

 

  • このグループにはある種の洞察力があると思う。人間の感情をつかみ、それを正直に発露する力というべきものが。

 

  • 中世の馬上試合がしたいね。ギター、ベース、ドラムのいでたちは人の顔に平手打ちをくらわすにはもってこいなんじゃないかな。俺たちはこの形でやることを選んだ。多くの人が何年も前に窓から捨ててしまったような形態でもね。俺たちには合っている。情感の方がテクニックより大事だと信じているんだ。

 

  • 『ボーイ』を作り始めたときのことはよく覚えている。ぼくは19歳か20歳だった。まだ父親と住んでいた時だ。たったふたりで。明け方の三時とか四時に家に帰ると、音を立てないようにこっそり階段を上がっていった。父親を起こしたくなかったからね。すごく機嫌が悪いかもしれない。でも彼は目を覚ましてこう言ったんだ。「今何時だ?」。それでぼくは「えぇと、一時」って答えた。すると彼は「レコードを作るのにどれだけかかってる?」と聞いた。「一週間」「レコードはどのくらいの長さなんだ?」「40分」「何ぃ、それなのにまだ終わっていないのか?」

 

  • いろいろなことを見たし学んできた。俺たちをシニカルにもできただろうけど、断固として絶対に負けるものかという気持ちにさせられたね。

 

  • 人は俺たちを、ダブリンから引っこ抜かれて世界に投げ出された4人の男と見ているんだ。そして俺たちは勝利を収めようとしているよ。俺たちは俺たちなりのやり方でアメリカを征服してビジネスマンたちをやっつけようとしているんだ。「今週の出来事」には紹介されないかも知れないけど、そんなの気にしないね。

 

  • 友人の一人が言うには、ボノが結婚してからというもの周りの人は苦労が減ったそうだ。いわく、「本当はスケベで感情的な奴なのに、クリスチャンとして生活しなきゃならないんだからね」。

 

  • 結婚していてツアーに出るなんてほとんど不可能に近い。だけどアリはそれを両立させてくれるんだ。ほとんど彼女の顔を見ずに一年が過ぎたよ。彼女が外出するところに俺が帰っていったりしてね。それでも彼女はとても強い人間で、気にしないんだ。

 

  • ほんのガキの頃から俺は服従させるのが不可能な子供だった。家族は今でもするんだけどさ、俺が部屋に入ってくる度に魔除けの十字を作ったよ(二本の指をクロスさせる)。8歳にして俺はキリストの敵と呼ばれたんだ!

 

  • 子供の頃にスーパーマーケットで働いてたことがあって・・・あれはキツイ仕事だったよなあ。朝7時に起きて夜9時までは帰れない。一日中ひたすら棚に商品を補充していくだけの仕事でさ。14歳ぐらいの時で、いつも牛乳スタンドの前に自転車を停めて働きに行ってたんだ。でも自分の仕事に見合った給料をもらってないって感じてて・・・ある時ボスのところに行って、『14歳にしてはメチャクチャきつい仕事をしてるんです、なのに数ポンドしかもらえないなんて、もうちょっと何とかなりませんか?』って言ったんだよ。そしたらボスは『何だその態度は、嫌なら来なくていい!』って言った。そこで僕は自分の自転車にまたがると、そのままスーパーマーケット中を走り回ったのさ――生鮮食品コーナーからオレンジ・ジュースから、全部踏み潰してね。

 

  • ぼくは昔、作文といえば海に行くことばかり描いてたよ。もし月について書けっていわれても、『ぼくは月に行って海を見つけました』って書くんだ。本当だよ。

 

  • お互いを知り尽くした四人の人間、それがこのグループさ。こんなグループは世界に滅多にいない。単にシンガーのいるグループなんかとは違うんだ。

 

  • バンドに入る前からの、4人の人間、4人の個人、4人の友達、それが大切なんだ。つまり、セッション・メンと言われる人たちは、何ら本物のクリエイティヴな表現を持たずにバンドに参加するんだよ。ただそこにいたいだけ。次のビッグなことを期待してたりしてさ。本当にパワフルな音楽は自然に出来上がるものだ。むりやり作られるものじゃない。ただ出てくるんだ。

 

  • 僕たち、よくパーティーに行くんだけどさ。LA、ニューヨーク、ロンドンと何処に行っても皆僕たちのためにパーティーを催してくれるんだ。テニスの有名選手や、映画スターなんかが皆やって来るんだよ。で、僕たちも中に入って、いろんな人とお喋りするんだけど、一時間もすると結局四人で話してるんだ。一日中、バスやホテルで一緒だったというのに。軋轢なんてものは今まで皆無だね。

 

  • 自然な軋轢、素晴らしい軋轢といったものがある。俺たちのエゴが個人的なエゴだとは思わない。バンドのエゴだよ。俺はエッジにこう言える。「お前が今弾いたようなのは好きじゃない」。彼は何も答えない。「いいかい、今やったのは好きじゃないんだ」。で、彼はこう言う。「お前が言うんならそうなんだろう」。

 

  • 誰に影響されてますか、って訊かれたらいつもこう答えるようにしてるんだ。「お互い同士にです」ってね。

 

  • エッジはあの歌のコードを思い出せない──少なくとも、こないだ訊いてみたときはそういってたよ。信じられないことさ。だって、彼は普通のコードを弾いてないんだから。自分でコードを考え出しているので、凄い記憶力が必要なんだ。フレットを押さえてみないことには、曲の弾き方を思い出せない。だから、しばらく曲を演奏してないと調子が狂っちゃうんだ。

 

  • 他のミュージシャンにCマイナーってどんなのか尋ねると、からかわれてると思うみたいなんだよ。

 

  • 自分のパロディをするわけにはいかないだろ。一時、僕たちみたいな音のバンドがたくさん出てきたじゃない? で、演奏してるとさ、『何かU2っぽくないか? おい、ちょっと待てよ。僕たちがU2なんじゃないか』(笑)なんてこともあった。殆ど自分のパロディをしそうになることもあったさ。でもそれは避けなきゃね。まぁ、エッジの仕事だけど。

 

  • 「他のグループ、特に年のいったグループはコードとかメロディとか歌詞とかって決め手から、そこから作り始めるみたいだね。俺たちの場合はムードから作っていくんだよ。ほんの4小節からとか。……でもボノの家でのあの20分が重要だったんだ。俺たちが大切にしているのは常にムードなんだ、コードやメロディじゃなくて」byエッジ

 

  • すばらしいギター・プレイヤー。だけど何より人間として素晴らしいんだ。彼は決して自分を自慢しない。彼はいろいろな面がある男だ。ギターを弾くのに没頭したかと思うと静かにアンプからプラグを引き抜いて家に帰る。彼に対する俺の尊敬は増す一方だよ。

 

  • エッジは本当に集中力のある奴なんだ。信じられないくらい高いIQを持っていて重要なことを片づけるのがうまい。ただ日常のことを忘れてしまうだけ。曲のコードとか、どこに自分がいるかとかね。

 

  • アメリカのギグで、俺がラリーのドラム・キットをステージから放り投げ、バンドを批判したことがあったんだ。そしたら、俺の理想の男エッジはさ(彼はいつだって沈着冷静なんだぜ)、激怒して俺の口にきついパンチを一発食らわしてきたんだ。すごかったよ。ガキの頃から彼を知ってるけど、ほんとにいいパンチだった。ステージの上でさ……トーキング・ヘッズとB-52'sが見てる前でだぜ。きっとあれもショーの演出の一部だと思ったんだろうな。

 

  • エッジはウェールズ人だ。誇り高いウェールズの男さ。俺、15歳の時にウェールズの女の子に恋をしたんだけど、彼女は俺より牛乳配達の男を選んだ。たぶん彼女は正しかったんだろうね。

 

  • アダムは自分がベースを弾けるかのようにふるまってたものさ。ふらっとやってきて、アクションだとかフレットだとかの言葉を使うんで、俺たちは当惑しちゃったね。彼はアンプをひとつ持っていた。だから俺たちは決して逆らわなかった。俺たち、この男はミュージシャンに違いないと思ったよ。で、ある日、俺たちは彼がひとつとして正しく音符を弾いていないことに気づいたんだ。ほんとにひとっつもね。

 

  • 「その後、アダムに会った。ドキドキしたよ。モジャモジャの金髪に黒メガネ、長いアフガンコート、首に山ほどのビーズ。すごくカッコよかった。すぐに「彼とバンドをやりたい」って言ったよ」byラリー

 

  • ラリーについての最初の記憶は俺たちが活動を始めた頃のことだ。俺達は彼の家のキッチンで最初のリハーサルをしていたんだけど、14,5歳の女の子たちが壁をよじ登って窓越しにラリーを見ててさ。ラリーときたら、女の子たちに失せろと怒鳴りつけると、ホースで水をぶっかけたんだぜ。彼はポップ・スターになることには興味ないんだ。ラリーはドラムを叩くのが好きなんだよ。

 

  • 彼(ラリー)のドラムセットの前に立つのはすごい体験だよ。毎晩強烈な蹴りを入れられてるみたいなもんだからね。

 

  • ただラリーにだけは、おれたちはパンク・バンドだ、と言えなかった。(にやりと笑って)彼はパンクをいやがってたからね。僕が頭を剃ってストゥージスやMC5を聴いていると、ラリーが『おれたち、パンク・バンドじゃないよね?』と訊いてきた。ぼくは『もちろん、パンク・バンドなんかじゃないさ。だから安心してドラムを叩いてくれ』と言ってやったよ(笑)。

 

  • 思ったんだ。『ああ、18才だってのに人生で一番大切な二つの事、生まれることと死ぬことは全く僕の意志の及ばない所にある。一体どうしようってんだろう?』って。その頃は答えが見つからないとよく怒ったり不満を覚えたりしたし。暴力的だったよ、精神的な暴力。

 

  • 〈ボーイ〉に収録されている〈アウト・オブ・コントロール〉はとてもいい仕上がりになったけど、今出回ってるデモ・ヴァージョンは4トラックのスタジオでレコーディングしたもので、かなり出来が悪い。最初にそれが出回ってるって聞いたときには、リフィー川を渡るオコンネル通りの橋から飛びこみたいと思ったよ。あの時点ではぼくらのベストの演奏だったけど、明らかにまだ不十分だったからね。

 

  • あの曲を聴くと、自然に歌が出てくるんだ。〈ブラディ・サンデー〉の場合、ラリーがあのビートを刻みはじめ、エッジが最初のコードを鳴らすと、まるで歌がひとりでに生命を得るような感じになる。あの歌はぼくにとってすごく大きな意味を持っている。それはぼく自身、あの歌を正しく理解してたのかどうか、自分でもよくわからないからなんだ。まちがって解釈していたかもしれないんだよ。

 

  • でも『WAR』を聴き返してみると自分でも感じるんだ、あのレコードに込められた怒りを。だから聴いてて居心地悪いんだよ。だから他人の視点で一体自分がどんな風に映っていたかがわかったんだ。お説教をたれて、街頭演説でもしてるみたいだって。

 

  • 俺たちはアイルランド人だと強く感じてるけど、俺たちをアイルランド人たらしめているのは目に見えるものじゃない。錫でできた笛とかパイプとかじゃないんだ。何かもっと新しいアイルランド人らしさがあるんだと思う。古いタイプのアイルランド人は好きじゃない。自分がその一員だと思ったことはない。

 

  • 僕にとってのU2の野望とは、極限までいくってこと。これまでにないほど攻撃的で、それでいて繊細な音楽を作ること。三ヶ月くらい前かな、ある朝起きて、はっと気付いたんだ、僕はアイルランド人なんだって(笑)。そのインパクトが結構あってね、音楽にも影響すると思うよ。だって僕たちは『アイルランド』のグループだから。僕たちの最大の武器は僕たちの身近にあるものだって気付いたとこさ。

 

  • 僕たちがどんな方向に向かっているのか、まだわからない。こんなことを考えるだけで夜も眠れないよ。まだ僕たちは始まったばかりだと思うだけで興奮しちゃって。今、本当の意味での出発をしてるとこなんだと思う。このことを話し出すと、十人がかりで取り押さえてもらわないと止まらないくらいだよ。

 

  • 今年に入って初めてお金が手に入るようになったよ。でもロックンロールは金の卵を抱えたガチョウじゃないからさ。トップ・オブ・ザ・ポップスに二度目の出演をした時ですら、バスに乗って帰ったんだよ。持ってたお金は全てバンドにつぎ込んでいたからね。言っておくけど、時給で考えると誰だって耐えられないと思うよ。組合があったら黙ってやしないぜ、週に30ポンドなんて。

 

  • ・なんで『夜のヒット・スタジオ』なんかに出たんですか。かなりU2のイメージと違い失望したファンも多いと思います。東京の初日ではステージでテレビ出演についてコメントしたそうですが、ここでもう一度出演の理由を話してもらえますか。
  • ボノ「いよいよ俺達も芸能界にデビューしたよ、と初日のコンサートではコメントしたんだ。実は事前にあの番組のビデオを観て、歌手達がみんな奇妙な服装で出たりしていて、すごくヘンな感じを受けたんだ、それで面白半分に出てみようという事にした。スタジオでもカメラを首からさげて『お会いできて、とてもうれしい』とかいった態度で通したんだ(笑)」
  • ・また依頼があったらあの番組に出ますか。
  • ボノ「(急に真面目な表情になり)二度と出ない」

 

  • ロック・ミュージシャンには常にいろんな甘い汁が用意されている。その甘い汁によって目標を見失わせようとするわけだ。フーなんかも初期はすごくよかったのに、今は目標を失ってしまった。僕らはそうならないように目標を常に抽象的な『音楽をより高いものにする』というものにしている。こうした抽象的な目標は永遠に達成不可能だ。だから僕らはいつもハングリーでいられる。そう、U2はいつもハングリーなんだよ。

 

  • ロンドンでは車の流れがとても速い。信号が青になった途端ブァーンと発進するんだ。ダブリンではまず咳をして、体を掻いて、それからだよ。

 

  • 彼が首相になる前にヒースロー空港で会ったんだよ。セキュリティを押しやってちょっと彼と口論した。三十分もしないうちに、警察がやってきたんだけど彼が「いや、大丈夫だから」って連中に言ってくれてね。
  • それから「続きはダブリンでしようじゃないか」って言うから、それで二人で飛行機に乗り込んで、またまた隣の席でやりあったってわけ。そんなに激しくはなかったけどね。俺は彼にどうして政治家は民衆の言葉で話さないのかって訊いた。何だって独自の言語を発明するんだってね。どの国のリーダーも政治用語を捨てて民衆に話しかけるべきだって言ったんだ。

 

  • 俺の子孫にはひそかに統計学を教えたいと思っちゃったね。パーソナリティーの危機って奴だよ。本物の問題に対処しなきゃいけないときには音楽を作ってるのが時間の無駄なんじゃないかって思えてしまってね。でもよーくわかったよ。U2は俺ができるベストのことだ。ピート・タウンゼントが拳で俺をこづいて言った。「社会福祉は俺みたいな年寄りに任せておけ」ってさ。

 

  • 初期の頃、ザ・フーピート・タウンゼントが、脇道にいっぱい出くわすだろうけど道にそれるなよと言ってくれたんだ。お前たちは本物のバンドっていうすごいことをしているんだからなって。

 

  • こう思ったよ。よし、U2はバンドとしていい。だけどもしかしたら他のことのほうがもっとうまくできるんじゃないか。都市の生活に関わるとか、何か現実のことで。問題を指摘するだけじゃなくてそれを解決しようとする道がさ。俺たちは崩壊寸前だった。

 

  • いろいろな意味で自分を見失い、まったくの狂人になっていたと思う。USフェスティバルでのことはね。ステージのいちばん上によじ登ったんだ。何百フィートもの高さだった。そこからキャンバスの上を歩いてさらに上に行こうとしたら布が破れてね。ああっ! 考えただけでぞっとするよ。あの男が誰か知らない。あんなとこまで登った男のことはね。だって、俺は高いところ怖いんだぜ。

 

  • 何ヶ月か前にエルヴィス・コステロに会ったら、「U2に関しては好きなのか嫌いなのかよくわからない」って言われた。「君はロープの上を歩いている。君の同世代の奴らは怖がって誰も渡ろうとしないロープだ。君がそこにとどまっている限り、僕は大したものだと感心する。でも君はしょっちゅうそこから落ちて……」。

 

  • 俺たちの会社ではジョ-クをとばす人間を許さないんだ。ニヤリとしたクルーは辞めさせてるよ。

 

  • 音楽への希望とはバンドの中に存在する希望だ。君に、精神の闘いをする時期が来たと信じてる。心の奥深くでね。このグループには立派な信仰がある。

 

  • 未来については怖いけれどシニカルでも悲観的でもない。それはきっと俺の信念から来るものなんだろうね。神を信じる気持ちが、俺を朝起きて世界に向き合おうという気持ちにさせてくれる。物事には何でも論理と理由があると確信しているんだ。すべては偶然に起こるのだとしたら、俺は本当におびえてしまうよ。轢かれるのが怖くて、道だって渡れない。

 

  • 人は俺たちが信じていることをセンセーショナルに扱いたがるんだ。俺たちの三人は敬虔なクリスチャンだ。人間が動物から進化しただけなんて考えには賛成できないね。それじゃ精神的なものがないじゃないか。そんなふうに考え始めたら人間性への真の尊敬は失われてしまうよ。君がただの歯車だったり、分子の集まりにすぎなかったり。世界の厭世主義の多くはそういう考えから生まれている。

 

  • 一度ローマ法王との謁見を求められたことがある。法王がU2に会いたがっていると言われたんだ。「こりゃあ面白い。『グロリア』を聴いたに違いない」って思ったよ。……だから結局のところ、「プライベートでなら会いましょう」と伝えたんだ。バチカンからの返事はこうだったよ。「ジャーナリストなし? 宣伝なし? しかし、それがこの会見で大切なんだ!」。それで俺は言ってやった。「悪いね。順番待ちの列に並んでくれないか」

 

  • 俺には信じるものがあって、それが俺の人生でとても大切なことなんだ。説明するのは難しいよ。だって人はすぐそれで評価しようとするからね。神を信じているってことを伝えるのが俺は実に下手でね。だからこの話題になると口をつぐむようにしてるんだ。今回もそうするつもりだよ。だけど、このことだけは言っておきたい。壁に書いてあったのを見たんだ。「神は死んだ(ニーチェ)」と書いてあった。そしてその下にはこうあった。「ニーチェは死んだ(神)」。

 

  • 俺が興味ある音楽は、神に向かっていくか背を向けるかだけだ。

 

  • 統合されたアイルランドが本当に見てみたいよ。だけどその夢を叶えるために誰かの頭に銃を突きつける奴なんか、絶対に支持しない。

 

  • チャールズ皇太子アイルランドに来てこう言ってくれたら素晴らしいと思うよ。過去に恐ろしい悲劇があったが我々にもその責任はある。これからは共にそこから抜け出していこう、ってね。そういうことが大切なんだ。さもなきゃ、王室なんて何の役目があるんだ?