賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

「No Line on the Horizon」全曲感想

なんだかやたらと巷間で評価の高いU2のニュー・アルバム。だから僕は目一杯斜に構えて感想を書くんだ!

ただのヒネクレ者じゃん。というセルフツッコミはさておき、現在のところ、NLOTHがそんな最高傑作とは思えないんだなあ。まあ、どうせ最後はベタ褒めになるに決まってるんだから、今は、今だけは全力であらがってみせるっ。




01. No Line On The Horizon

のっけからイーノ色まるだしのシンセサイザーが耳に入り、いささか不安になるが、ボノさんのシャウトが異様に素晴らしいので、その不安も瞬く間に払拭される。
この、不穏なまでの明るさは一体何だろう? 明るいんだけど、どこか薄気味悪いものを感じてしまう。根拠なく無暗に明るい人を見かけた時のような不安さだ。
これからU2は、僕たちを何処にいざなってゆくのだろうか。よーそろ~。


02. Magnificent

ずしりと響く冒頭のギターで、ようやくほっとする。いつものU2だ~。
だが、その後のリフで、またも不安な気持ちに。なんかちょっと、アニソンっぽくない?
70年代を意識してるようなサウンドだが、僕にはなんだかチャラく聴こえてしまう。
とか言いつつ、ギターが少し「Threw A Brick Through A Window」と似ているところが気に入ってたりして。
ライヴでなら、エッジのギターもよりハードになると思うので、上記の不満点は解消されてしまうんだろうなあ。「Smile」と同じく、異教的な雰囲気が加味されてるところも好きです。


03. Moment of Surrender

イーノっぽいなあ、もう。イーノがU2のメンバーだったら、もっとすっきり聴けるんだけど、U2を褒めるべきなのかイーノを褒めるべきなのか、迷っちまうぜ。
この曲でも、ボノさんのヴォーカルが大活躍。ライヴでもこの声を維持して出せるのか不安になるほど。
7分24秒と、アルバム最長の演奏時間であるが(ちなみに最短はGet On Your Boots)、長い曲特有のストレスはまったく感じさせない。この新幹線な聴き心地は、まさにパッセンジャーズ(笑) ここはやはり、イーノを褒めるべきなのか。


04. Unknown Caller

おや、なんだか、シガーロスみたいだぞ。
ギターが始まって、ようやくU2っぽくなったきたぞ。でもコーラスがなんだが、ビージーズっぽいぞ。
この曲に限らずNLOTHでは、本当に「おおお~お」が多いなあ。
ビートルズはデビュー当時、「イエー・イエー・バンド」と言われてたそうですが、このアルバムに限って言えば、まさにU2は「オー・オー・バンド」ですね(笑)
終盤のエッジのギターは、珍しくドラマティック。70年代だなあ。狙ってるんだろうなあ。
エッジが演るから面白いんだけど、U2をあまり知らないキッズには「ダセえ」とか思われちゃうリスクを冒してまでやるコトじゃない気もするぞ。
NLOTHの中で評価に困る曲その1。


05. I'll Go Crazy If I Don't Go Crazy Tonight

いいねえ。イーノ色が感じられないねえ。イーノはワルモノなのかよ(笑)
この曲のシンプルなサウンドは、思いっ切り「Sweetest Thing」を想起しました。今こそ、この曲をライヴでやって欲しいなあ。
ベイベ・ベイベ・ベイベー」あたりはUltravioletを思い出させますが、Sweetest Thingにせよ、Ultravioletにせよ、男女の間の苦々しい思いを歌った曲ですので、この曲が何を歌った曲なのか、歌詞カードを見るのが楽しみです。ハッ、ハッ、ハッ!


06. Get On Your Boots

どうコメントすれば良いのか・・・。
予想通り、アルバムの中で聴けば、そんなにイヤじゃないんだなあ。演奏時間が短くてサラッと終わるし。
「I'll Go Crazy If I Don't Go Crazy Tonight」が、80年代U2を想起させる曲とすれば、「Get On Your Boots」はVertigoを想起させる曲で、U2の変化、成長が鮮明になるという効果もありますね。
この曲の一番の不満点は、「You don't know how beautiful you are」(君は自分が美しいことを知らないんだ)というコーラス。
「Beautiful Day」でのいっつあ・びゅてぃふぉ・でいっ!や、「City Of Blinding Lights」でのあー・ゆー・るっく・そー・びゅ~てふぉっ・とぅなぁ~い!」と比較すると恐ろしく説得力に欠けている。「本当にそう思ってるの?」と問い質したくなる、そんな不自然さです。だまされるぜー、気をつけよーぜ、なあ!(byジョセフ・ジョースター


07. Stand Up Comedy

えっとこれ、なんてレッド・ツェッペリン
初めて聴いた時、この曲が始まった途端に吹き出してしまいました。なまじリフが格好良いだけに余計可笑しい。まさにコメディー。
ラ~ウ・ラ~ウ・ラ~ウ」なんて「胸いっぱいの愛を」が思い浮かんじゃいますね。ウォナ・ホナロラ~ブ♪
本当に70年代だなあ。もう絶対意識してるでしょ?
ボノさんのヴォーカルは、このアルバムの中でも一番の出来。最高っす!
ライヴで物凄く聴きたくなるけど、やっぱり笑っちゃうだろうなあ。


08. Fez - Being Born

この曲となら、心中してもいい。僕がU2を聴くのは、こういう曲を聴くためなんですよ。
生命そのものに触れている感じ。生きるとはこういうことなんだとアタマでなくハートで受け止める。喜ばしく、そして哀しい。
ここに至って、ようやくU2のニュー・アルバムを聴いている実感が、じわじわと湧いてきます。ライヴでは是非、この曲をオープニングに!
アルバム「October」に収録されている「Scarlet」に近い曲調ですが、それより遥かに力強く、劇的なナンバーだ。プログレ好きの人間にはたまりません。マイク・オールドフィールドもビックリよ~。


09. White As Snow

NLOTHの中で評価に困る曲その2。
なんというか、「演歌の花道」? そのアルペジオはないわ~。雪降る中、着物姿でうつむきながら歩くボノさんの姿が浮かんで困ります。ダンチョネ~。


10. Breathe

機関銃のように声をぶっ放すボノさん。最高潮に調子に乗ってます。ライヴでもこのノリでやれるのん?
ボノさんが凄く頑張ってるのに対し、エッジのギターは、なんか普通だなあ。せっかくボノさんがなんちゃってラッパーになりきっているのだから、エッジも、もうちみっと、はっちゃけたギターを披露して欲しかったです。


11. Cedars Of Lebanon

ラスト・ナンバー。この曲もなんだか大人しいなあ。
Walk to the Walter」と同じく、ボノさんは歌うという行為を完全に破棄してますが(笑)、Walk to the Walterの場合は、後半に盛り上がるからなあ。最後までこの調子だとは思いませんでした。え、これで終わり?
White As Snowと同じく、歌詞を読めば、もう少し見方が変わると思うのだけれど、現時点ではそんなグッと来る曲ではないです。我慢できるところまで歌詞カードは開かないんだっ!


12. No Line On The Horizon 2

日本盤のボートラとして、この曲を入れた人はエラいよ!
ビートルズのサージェント・ペパー・リプライズみたいな効果があります。
2の方は、ギターの音が協調されているので、よりロックしている印象がありますね。リフが少し、Lady With The Spinning Headに似てるところがまた、あの頃の「俺達はなんだってやってるぜ!」な雰囲気が感じられて燃えますわ~。このバンドはやっぱりギターバンドなんだなあと今さら思ったり。




とりあえず、現時点での感想。間違いなく、1ヶ月後には感想が変わってます(笑)