賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

Polysicsへのファンレター(勿論投函しません)

前略こんにちわ。

つい最近、あなたたちのバンドのファンになった者です。
とは言っても、あなたたちのことは、結構昔から存じてました。

昔――7~8年くらい前でしょうか、あなたたちのCDを貸してくれた人がいて、
早速聴かせていただきました。

その時の感想は、いたって低調で、「確かに面白い音を出すけど、なんかリズムが単調だし、
すぐに飽きそう」といったものでした。

それっきり、あなたたちのことは、すっかり忘れ去っていたのでしたが、7月の初旬頃でしょうか。
あなたたちがサマソニに出演されるというので、昔のコトを思い出し、動画で観てみようという
気になりました。

その動画は、イギリスの野外フェスでの演奏で、最初はほとんど声援がなかったイギリスの観客が、
次第にあなたたちの演奏に熱狂していく様が、ありありと撮られていて、大変感動しました。

後に、色々あなたたちの演奏を動画で拝見しましたが、見事にそのままですね。
日本のバンドで初めてメインステージに抜擢されたとのことで、ワタシなら、ここで何か、
特別なことを一発カマしてやろうかと思うものですが、実にいつも通りでした(笑)

「どこでやろうが、誰が観客だろうが、関係ない。そのままの自分を見せるだけだ」

そういう意志が感じられました。

あなたたちの素晴らしいライヴを拝見して、とりあえずベスト盤のCD(『POLYSICS OR DIE!!!!』)を
購入しました。実にワケが分からないですね(笑)
当時のワタシでは、到底理解できないはずです。現在のワタシでも、ライヴを拝見してなかったら、
首を横に振っていたと思います。


ここで少し、話を脱線してもよろしいでしょうか?
もとより、この文自体が脱線話なのですが。

ワタシは10代の頃から洋楽を聴いているのですが、その結果、「ロックは英語でやるものだ」という、
確固たる信念が出来上がりました。

そんな信念を持ってると、日本人のバンドが、どいつもこいつも偽物にしか見えなくなってしまう。
「ロックみたいなものをやってる連中」と、意味もなく軽蔑したりします。阿呆らしいですね。

近頃は、洋楽とまったく遜色のない日本人のバンドが多く現れて、「おおっ」と驚嘆しているのですが、
これもよく考えてみると、彼らを「日本人離れしたバンド」と見做しているワケで、「日本人とは思えない」
と、結局は「日本人にロックはできない」ことを前提に考えているのですね。

日本人であるからといって、彼らに軽侮の念を覚えてしまう。同じ日本人なのに。
これははっきり間違った考えです。

ただ、間違っていると激しく反省していても、そうそう自分の感性を矯正することはできない。
どうしても、彼らを「まがいもの」と考えてしまう。

ジョン・レノンは、「GOD」という曲の冒頭で、「God is the concept by which we measure our pain」
(神とは苦痛の度合いを測る概念だ)と語ってますが、このGODはRockに変えても良いのではないかと
思います。

ロックとは、苦痛の度合いを測る概念だ。

苦痛の音楽。この「苦痛」を表現する上で、ロックは英語という言語を必須としている。
あるいは、そういった「苦痛」を英語で表現するのがロックなのだと、ワタシの感性は受けとめている
のかもしれません。

ここからさらに、ある疑惑が胸中に生じます。
英語が分からない自分は、そもそもロックが分からないのではないかと。
10代の頃から慣れ親しんでいるから、分かったつもりになってるだけであって、
実のところ、ワタシは彼らの「痛み」を理解していないのではないか。


この疑惑には、ずいぶん悩まされたものですが、それはともかく、あなたたちの音楽には
「苦痛」はありません。ですが、ロックです。不思議なくらいロックです。

これはどういうことなのでしょう?

分かりません。謎です。驚異です。

あなたたちの音楽は、明らかに日本人によって作られたものだと、それはもう同じ日本人として、
実によく伝わってきます。

今まででしたら、「だからロックじゃない」と判断するのですが、どうにもロックです。
あなたたちの音楽が日本よりも、むしろ海外から高い評価を受けているというのも、あなたたちの
音楽がロックであることの証左であるように思えます。

要するに、あなたたちの音楽は、ワタシのこれまでの価値観を木端微塵に打ち砕いてしまったのです。
そして、それが非常に痛快なのです。10年来の頭痛が一挙に消え去ったかのような心持ちです。

あなたたちの音楽には「痛み」はありませんが、代わりに、さあ、なんでしょう。強いて挙げれば
「笑顔」があるというのでしょうか。

あなたたちのリーダーであるハヤシさんは、実に楽しそうに演奏していますね。ワタシは今まで、
あんなに楽しそうにギターを演奏する人を見たことがありません。

「笑顔から生まれるロック」というのも、ずいぶんと不気味なものでありますが、なに、あなたたちの
音楽の歌詞に比べれば、全然可愛いものですよ。

もう10年もやってらっしゃるのですから、こんな心配は無用なのですが、その「笑顔」が、いつまでも
続きますように、願ってやみません。

現在は全国でツアーをおこなっているようですね。
体調にはお気を付けて、無事盛況のうちに終了することをお祈りします。






<追記>
あんまりというか、全然U2に関係ないんですけど、最近記事をまったく更新してなかったので、
こちらの書庫に入れさせていただきました。
いずれ、ちゃんとU2の記事を更新しましたら、移動致します~。m(_ _)m