賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

山本修世を読んでみた(と見せかけて実は...)

橋本みつるの新作(「美しいこと」)の続きが気になる賽の目です、こんばんわ。

YAHOO!ブログでも話題騒然ですよ!(ちょほ~)。ヒロインは、連載第1回で、「美しいものが見たい」と願望するのですが、第2回で、早くも「美しいもの」を見てしまいましたよ。わお、展開早いな! まあ、短期集中連載ですからね。

想像していたよりも、ずいぶんと具体的な「美しいもの」で、いささか驚きましたが、ああでも、観念的っちゃあ、観念的なのかな?
犯罪行為に走ってまで、「美しいもの」を見ようとする登場人物に、橋本みつるの有するアナーキーさを思い出しました。存外に目的のために他人を傷つけることを厭わないキャラが多いよな、橋本みつるの作品は。

今のところ、ヒロインのキャラクターが、あまりつかめなかったりするのですが(夜居は分かりやすいな)、こういう表情を見てると(「でも息がつまるな」のコマは秀逸)、いつも通りのキャラクターではあるなあとも思います。


なにかこう
誰が見ても
文句が言えない様な
たとえば

凄く綺麗なものが
あればいいのに

偽善な感じや
安易さとか
全然感じない

それぞれの
好みとかも
超えた感じの

ひと目見て分かる
美しいものがあったら

どんなに
ホッとする
だろう

そしたら
そればっかり
見て

それを信じて
暮らすのに


うむ、いつも通りだな!

日本はウツクシ!」と、某ロックスターがゆってましたけど、
この女の子は、それでは納得しないかもしれません(笑)

昔の単行本で、橋本みつるが、ネーム作業について、こんなコメントを残してますが↓
アップにするタイミングやコマの大きさとか、セリフをちょっと変えるだけで凄く心に入って来かたが違ったりして、ハマってしまう。なんて不思議なんだ。(中略)
本当にネーム作りはパズルの様だといつも感じてます。

こういうコメントを読むと、少年マンガと少女マンガの違いというか、週刊誌連載と月刊誌連載の違いをモロに感じてしまいます。
週刊誌連載で、上記のようなコトを気にしていたら、とても連載が続けられないと思います(笑)
パズルのように組み立てられた作品を解きほぐす楽しみ、というのがワタシの少女マンガというか、橋本みつるの作品を読む楽しみの一つなんですが、短編の読切形式ならともかく、作品が長くなると、それを解きほぐすのも、なかなか大変です。

今回の「美しいもの」が、今イチ入り込めないのも、それが原因かな?
中篇の「パーフェクトストレンジャー」も、最初は読み辛かったなあ。そういえば、この作品にも、人の心が読めるキャラが出てきましたっけ。こちらは宇宙人なんですが(笑)


と、異様に前置きが長くなりましたが、その橋本みつるに作風が似てるっていう、山本修世さんの本を読んでみたのですよ。女性ですよ。最初、名前を見た時、一瞬男性かと思ってしまいましたよ。


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「告白倶楽部」は、巻数が長いので、短編集のこの2冊を買ってきました。

さあ、どう似てるのか、見せてくれませい!

ということで、まずは『飛べない僕らは風を見る』を読んでみたのですが、

・飛べない僕らは風を見る 2002年
・階段から飛べ 2001年
・スキップ 1999年
・さあ天使になりなさい 1998年
・地図 1993年

の5編を収録。後になるほど、昔の作品になるのですな。
表題作の「飛べない僕らは風を見る」は、男と女の仲になった、二卵性双生児のお話。
いや、そういう近親愛モノは、二宮ひかるで間に合ってますんで・・・

二宮ひかるの新連載が、これからアワーズで始まるよっ!

まあまあ、それはさておきまして、う~ん、どうなんですかねえ。「羊のうた」とか「日出処の天子」クラスの名作でしたら、そういうのもアリだと思いますが、単に「禁じられた愛」をテーマにしたいってだけとちゃうんけ、って気がして、あんまり好きになれないなあ。
ノローグの配置の仕方とか、確かに橋本みつるに通じるものがあるかなあって思いましたが・・・う~ん。

と、微妙な気持ちで、次は「階段から飛べ」を読みましたが、お、お、これはいいですね。こういうのは好きですよ~。話の内容は、こっ恥ずかしくて、とても要約できませんが、少女マンガって言ったら、ワタシはこういう作品を連想しますね。それくらい王道チックなお話でした。

スキップ」。む、む、これもイイですね。といいますか、すごくイイです
当時の担当さんがやたら気に入って下さってました」と、あとがきで書いてありましたが、その担当さんは、絶対男性ですね。このテのお話は、オトコでしたら、すかさず好きになりますよ。

ヒロインの髪型が、カラスを飼っている、イエスタデイな女の子を彷彿させますが、この作品なら男性コミック誌で載ってても、そんな違和感ないだろうなー。コミックハイはどんどん、こういう作品を掲載してくださいよ。コミケ麻井麦の抱き枕とか売ってる場合じゃないですよ。

さあ天使になりなさい」。作者が作風を模索期ということで、SFチックな設定で描かれてますが、板についてない感じですなあ。キャラもなんか人工的で感情移入しにくいな。

地図」。最後の2ページがいいです。ベタな終わり方をしてくれましたが、こういうの好き。
最初期の作品らしい、勢いだけで描いたような部分も多々見られるものの、これが一番橋本みつるっぽいかも。橋本みつるなら、もっとゴチャラゴチャラした話(「人体星月夜」etc)にするでしょうけれど(笑)

5編中では、やはり「スキップ」が出色ですね。これ1編で充分モトが取れました(笑)


次は『少年中毒』を読んでみましたが・・・

うむ、これは橋本みつるだな!

男の子の唇」なんて、ワタシが愛してやまない「犬ケガ」そのものじゃないですか。
『夢を見る人』4冊持っているオレが言うんですから、間違いないですよ。なんでそんなに持ってるねん。

他の短編も、随所に橋本みつるテイストを感じる箇所がありますが、絵柄を今風にモデルチェンジしてるので、そんなに「似てる~」って鼻につく程ではないですね。橋本みつるも、これぐらい絵柄に順応性があったらねえ・・・。まあワタシは橋本みつるのあの絵柄は好きなんですけど、ちょっとだけ絵で損してるよな、橋本みつる
それぞれのお話は、そんなに個性を感じることができなかったので、割愛させていただきます。

山本修世さんの作品を読んでみて、改めて橋本みつるの特異性が実感できました。
良くも悪くも、山本修世さんは“普通”ですので、作品の内容がすっと入ってきますが、やっぱ橋本みつるは難解ですわ。「男の子の唇」と「犬ケガ」を比較してみて良く分かりました。これからは、手当たり次第に橋本みつるを薦めるのは控えることにすべえ。好き嫌い以前の問題のような気がしてきた(笑)

あ、あと最後に、『少年中毒』のあとがきで、亡くなられたお父さんの話が載ってましたが、いい話でした。恋愛モノが書きたかったという脚本家のお父さん、娘さんが少女マンガ家になられて、良かったですねえ。