賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

高橋慶太郎「ヨルムンガンド」を読む。

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おまいら、存外に分かりやすいな。

今回もアマゾンであらすじ紹介の文を引用させてもらおうかな~って思ってたら、この項目で噴いた。
ちなみに2巻で記載されてあったあらすじはこう。

 

世界平和のために武器を売る女。武器を憎みながらも武器で戦う少年。武器商人ココと少年兵ヨナの繰り広げる、ピカレスク・エンタテインメント! 
うむ、見事な要約だな! もういっかあ、俺が書かなくても。
と、思わず擱筆してしまいたくなるくらい簡にして要を得た紹介文ですが、あえて蛇足を書き連ねますと、矛盾の中で生きる人間の姿は美しいなあと。どないやねん。

 

ワタクシ賽の目は、「ガン・アクション」ってジャンルがどうにもニガテでして、この前までアワーズで連載してた「トライガン・マキシマム」なんて、登場人物がなにをやってるのか全然分からなかったくらいなのですが(感想を書けんかったなあ)、そう言いつつ、ガンスリやらブラクラやらを読んでしまっている自分が、いとをかし。


そんな好き嫌いの激しいワタシですが、この「ヨルムンガンド」は、わりかし読みやすいガン・アクション漫画だなあと思いました。
なんといっても、武器商人ココのキャラクターが良いですな! 前にも書いたよーな気がしますが、こういう飄々としたキャラは好きだわ~。

 

少年兵ヨナとの人間関係もイイですね。「なんでも教えてくれるお姉さん」というのは良きものです! 「ガンスリンガー・ガール」(相田裕)のロッサーナとか、「クロノスヘイズ」(高野真之)の冬子おばさんとか、「真月譚月姫」の青子先生とか・・・なんでみんな電撃大王ばっかなんだろう?

 

じゃあ、酒見賢一の「聖母の部隊」のマリアとか。
今、読み返して思ったんだが、「ガンスリンガー・ガール」と「聖母の部隊」って、設定がちょっと似てるよな。相田裕が「聖母の部隊」を読んだ事があるのか訊いてみたい気がする。

 

それはともかく「ヨルムンガンド」ですが、こういう作品を読むと、マンガの魅力は「個性」だよなあと、改めて実感いたしました。
たとえば画力という点では、推薦人である広江礼威氏などには遠く及ばないと思われますし、ストーリーテリングという点でも、同じく伊藤明弘氏にかなう術もない。相田裕ほど、魅力的なキャラを造形する力もない。
はっきり言ってしまえば、「下手」なワケですが(はっきり言いすぎ!)、それでもワタシが読んでいるガン・アクション系の作品では、現時点で「ヨルムンガンド」が一番好きだと言ってしまうかもしれない。

 

アフタ増刊シーズンの頃から持っていた「なんだか分からないが、つい読んでしまう」不可思議な魅力、それを「個性」などという、もはや手垢がつきまくりの言葉でくくってしまうのは、いかにも残念な話ですが、それが、「ヨルムンガンド」では、よりはっきりと出てきたように見受けられました。

 

それは、主人公を「武器商人」という、戦闘から一歩引いた立場に置いたことに起因するかもしれない。「オーディナリー±」の主人公とは違って、余裕を持つことができたのが大きいかもなあ。

 

ここらへんのくだりなどは(→)、読んでいて「おお!」と思ってしまったのですが、「確実に成長していやがる!」みたいな、人にマンガを読ませる技術が、身に付いてきてるなあと感心しました。この場合は、「サンデーGXの担当編集者さん、グッジョブ!」と言うべきかもしれません(笑) いや、本当に上手くなったなあって思うんですよ。


今後の展開にも興味があるのですが、先に書いたように、ガン・アクションそのものには、でんでん関心がないので、それよりも「世界平和のために武器を売る」というココの真意が、これから徐々に見えてくるのだろうなあと、そこが楽しみであったりします。スカされる可能性がなくもないのですが(笑)、まあ、そういうのは慣れてるので(「はじめの一歩」とかな!)、ノンビリ続刊を待つことにいたしましょうか。




しかし、だからこそ、彼らは信じるのだ。われわれの善と、われわれの悪とを信じ、踏みこたえてそこに立つのだ。形而上と形而下のはざまで謎を見据えつつ、しかしわれわれの尊厳はここにしかないと知るからだ。私は、このような人びとの姿を、限りなく美しいと思う。それこそが人間の果実であり、おそらくは、祈りのように、魂が最も神に似る瞬間なのだと、私もまた信じている。(池田晶子『ロゴスに訊け』)