賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

HTDAABノート

  Miracle Drug

U2のアルバムの2曲目は、なぜか非常に完成度の高い曲が収まることが多いような気がする。
初期三部作の場合は、Twilight、I Fall Down、Seconds。アメリカ三部作では、Pride、I Still Haven't Found What I'm Looking For、Van Diemen's Land。ハイパー三部作だと、Even Better Than The Real Thing、Babyface、Do You Feel Lovedとあり、そして前作ATYCLBは、Stuck In A Moment You Can't Get Out Ofと、どれも粒揃いの名曲ばかりだ。
このHTDAABでも、当然のように、このMiracle Drugが投入されている。

 

近年のU2のアルバムは、先行シングルが、そのままアルバムのオープニングに起用されている。Discotheque然り、Beautiful Day然りだ。
今作も、Vertigoがオープニングを飾ったが、もし、Zoo StationやZOOROPAのような曲をオープニングに持ってきていたら、HTDAABはどんなアルバムになっていただろうか、などと夢想してしまう。

 

全体が部分を超えてない」というボノさんの発言を鑑みて、いっそVertigoをアルバムから外すという選択もあったのではないか。
Vertigoみたいな曲がいっぱい入っているのだろうと期待して、HTDAABを購入した人は、少なからず失望してしまったようだ。
個人的に、Vertigo/All Because Of Youのカップリングでシングルを出してくれてたら、と妄想する事がある。U2史上最強のシングルの誕生だ! 有り得ない(笑)

 

アルバム発売前に、昼も夜もなく、アホほどVertigoを聴いた者にとって、覚えずこのMiracle Drugを、真のオープニングとして受け入れてしまう傾向にある。
静かな始まり、突然の盛り上がり、転調、劇的なフィナーレと、U2的な、あまりにもU2的なこの曲は、僕らにとって、宝石のような価値を持つ。

 

みんな聴いてくれ! これがU2なんです。これが私たちが愛してやまないU2なのです!

 

と、身も世もなく喚き散らしたくなる衝動に何度かられたことだろう。
Vertigoを喜んで聴いてくれた人たちは、みな一様に首をかしげていたが(笑)

 

スケールの大きさといった点から見れば、なるほどCity Of Blinding Lightsに軍配が上がるが、曲の隅々にまでU2的エッセンスが詰め込まれたこの曲こそが、HTDAABの“顔”と言って良いのではないかと思う。

 

そして、こんな言い方をしてしまうと、POPやATYCLBを否定しているように見えかねないのだが、それでもあえて、この曲を聴いているうちに、じわじわと込み上げてきたあの気持ち、あの泣きたくなるような、笑いたくなるような、どうしようもない感情のうちに、この言葉を白状せざるを得ないのです。


U2が帰ってきた――――」