賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

橋本みつるの新作を読む

なんかもう、ブログを更新しようとするたびに、やたらブログが重くって、結局、「もういいわよ! 明日更新するわよ! なにさ、お高くとまっちゃって!」とフテくされて寝てしまい、結局更新しないままに至るというのが、今までのワタシの行動パターンだったんですが、これからは、重かろうが軽かろうが、知ったことかー知るもんかーで、ずんどこ更新しようじゃないかと。でないと、いつまで経っても更新できないからね。もうワイド・アウェイクですよ。アイム・ノット・スリーピングですよ。オー・ノゥ・オー・ノォ~♪

ということで、今回は7月28日に発売されたウィングス9月号に掲載された橋本みつるの新作(「流星」)について書きたいと思います。「橋本みつる」と言っても、多分、誰も知らないと思うんですけど(ブログで検索しても全然ヒットしないっす)、賽の目は、この人の大ファンであります。去年の年末くらいかな、なにげなく、この人の作品を読み始めたんですが、いや、ハマったハマった。これでもかっちゅーくらい、ハマりましたよ。

ただ、この人は現在、マンガ家の活動を中止気味でして、2000年頃に掲載誌の「きみとぼく」(ソニーマガジンズ刊行)が休刊となり、以降ふっつりと姿を消したものの、2004年、ウィングスにて、新人として衝撃的に再デビューを飾り(「青いドライブ」)、すわ、橋本みつる4年半ぶりに復活か!? と思いきや、それっきり音沙汰もなく、「ああ、あれで終わりなのかなあ、やっぱ今のマンガっ子たちには受けへんかったか」と嘆いてたところへ、約1年半ぶりの今回の新作ですよ。大増66ページですよ。これはもう、買うしかないだろう、ウィングスを!

まあ、なるしまゆりの「少年魔法士」や、よしながふみの「フラワー・オブ・ライフ」が、どういう雑誌で連載されてるのかという好奇心も、無論あったのですが、ええ! 買いましたよ。買いましたとも! 少女マンガ雑誌を買ったのは、これが生まれて初めてですよ。表紙のコピーが「とけちゃう前に召しあがれ☆」などという、ほとんどセクハラものの文句でしたが、根性で買いましたよ。

橋本みつるの新作は、全てに優先する・・・!(ミストバーンっぽく)


という次第で、ワタシは橋本みつるの新作を、やっとリアルタイムで読むことができたのですが、おお、これが2005年の橋本みつるの絵柄かあ。正直、ある程度劣化してることは覚悟してました。ほんのちょっとでもマンガを描かなくなると、テキメンに絵がヘタになることは、過去のマンガ家さんの例を顧みて、よっく分かってましたので。先週のモーニングに載ってた、柴門ふみのアレもヒドかったなあ。

ですが、恐る恐る読んでみて、あれ、全然変わってないじゃんと。ブランクはあったのだけれど、その間も、マンガから離れていなかったのだなと、ほっとすると同時に、なんだか胸が熱くなってきました。やっぱこの人は、根っからのマンガ家さんなんだと(笑)

相変わらず、手の描き方がヘンだったりするのですが、 なんだか宇宙人みたいですね。というか実際宇宙人なんですけど、この女の子(笑) でも、この独特の手や瞳の描き方を見てると、「ああ、今、橋本みつるを読んでるんだなあ」と実感できます。

コマ割りも、相変わらず破天荒だったりするんですけれども、「GET DOWN」の頃に比べると、いささか落ち着いたように見えますね。66ページという数字は、橋本みつるが、今回描きたいことを思う存分描き尽くしたためなのだろうなあ。昔は描きたいことを無理矢理規定のページに収めようとして、ぎゅう詰めになり、結果あの大胆なコマ割りになってしまったのかなと、ちょっと思いました。とはいえ、例えばこのページの2コマ目など、男の子の顔の輪郭がコマからはみ出しちゃってるんですが。コ、コワイよ~。やはりこの人は、正真正銘の、ヘンタイコマ割りマンガ家さんなんだなあと(笑) ちなみにワタシは「コマ割りのセンス=マンガ家のセンス」と考えてますので、橋本みつるというマンガ家のセンスを非常に高く買っております。

で、作品の感想なんですが、やっぱり読後、じーんとしました。この人のことを、「情感の女王」と、ヒソカに呼んでいるのですが、この人の作品を読んでいると、精神が、思春期の頃の、情緒不安定だったあの頃に戻ってしまいますね。「リアリティ」という言い方はマズいかもしれませんが、「想起」というのかな。自分の記憶の片隅にしまってある、もう思い出すこともなくなった、ある情感を掘り起こす、とても強い力が、橋本みつるの作品にはあるんですよ。

たとえば、この作品では、高校生の時に付き合っていた女の子と、5年ぶりに再会するシーンがあるのですが、この女の子は両目を閉じて笑う仕草をよくするんですよ。で、5年ぶりに会ってみると、やっぱりこの仕草で笑いかけてきて、ええ、なんといいましょうか、ず・きゅ――んになってしまうんですよ(笑) いやあ、青春だね!(笑)

そういえば、この作品は男の子視点で語られてますが、橋本みつる作品では、ちょっと珍しいかも。初期の傑作「DANCE AWAY」以来なのかな? そして、橋本みつる作品で、メインキャラが大学生に成長するのは、初めて見ました。この人は本当に中学生or高校生しか描かない人だからなあ。「幼い恋」というのが、この人にとっては永遠のテーマなんでしょうな。そういうタイトルの作品も描いてますが。

結論としては、この新作では、「成熟した橋本みつる」が見れたのが最大の収穫でした。橋本みつるが成熟するとは夢にも思わなかったです(笑) 次の作品では、この成熟さが、どのような方向へ向かってゆくのか、非常に楽しみです。頼みますから、今度は半年後くらいに新作を描いてくださいね(笑) 年単位で待たされるのは、やっぱキツいっす。


さて、最後に宣伝を少々(笑)
現在、書店で購入できる橋本みつる作品は、白泉社から出している「GET DOWN」くらいなんですが、品切れ状態になってる「きみとぼくコミックス」の3冊(「パーフェクト・ストレンジャー」「夢を見る人」「幼い恋」)も、是非とも復刊して欲しいです。そして、長らく陽の目を見ていない、初期の未単行本化作品にもジーフィーを! もう1本、もう1作、新作を描いてくれれば、なんとか単行本に、まとめられるんじゃないのかなあ。頑張れっ、橋本みつる新書館!!