賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

誰も戦争を教えられない(古市憲寿)

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作者さんについては、なんかワイドナショーで何回か観たな~程度の認識しかなかったのですが面白かったです。
こういう風にしか「戦争」というものを捉えることができないのかという苛立たしい気持ち、それを皆様にも共有してもらえたらな~という久々に悪意の感情が芽生えました(笑)
誰も戦争を教えられない・・・その通りだ。


 いま、総力戦の前提となっていた「国民国家」という仕組みが揺らぎ始めている。
 紫綬褒章受賞の政治学者、田中明彦のいう「新しい中世」という言葉が現代社会の状況をよく表している。現代では、アップルやグーグルなどのグローバル企業、アルカイダといったテロリスト、グリーンピースといったNGOなど有象無象の主体が世界を動かす。国民国家が主役だった近代と違い、国家はその中の一アクターになりつつある。
 「新しい中世」を象徴するのが「戦争の民営化」だ。
 徴兵によって集められた国民軍に代わって、株式会社の集めた傭兵たちが現代の戦場には欠かせないものになっている。
 特に2003年に始まったイラク戦争では軍事会社によって集められた傭兵、爆弾処理の専門家、兵士に食糧を提供するコックや運転手といった「民間人」が大活躍をした。
 イラク戦争で軍事会社によって集められた人員は19万人に及んだといい、米兵の3万人という数をはるかに超える。アメリカ政府は戦費の5分の1にあたる850億ドルこうした民間企業に支払っていたという。
 厳密な指揮系統が存在し、軍事裁判所までを完備した正規軍と違って、民間会社に雇われた私兵を管理するルールは未確立だ。彼らは事実上、戦闘行為に関わりながらも、その実態は公表されず、死者数さえも明らかにならないことが多い。(p306~307)

一部引用。「新しい中世」という言葉におおっとなってしまったのですが、そういう時代が来るのかなあ。


 日露戦争後、乃木希典によって犠牲者を弔うための慰霊塔が建てられた。二〇三を当て字にした「爾霊山」という文字が刻まれた塔は今、落書きでいっぱいだ。塔の側にある説明板には日本語で「この爾霊山はすでに日本帝国主義による対外侵略の罪の証拠と恥の柱になった」、中国語で「勿忘国恥」と書かれている。
 写真を撮ったりしていると、親切そうなおばさんが片言の日本語で声を掛けてきた。慰霊塔のすぐ隣に建つ土産屋の店員らしい。そこでは日本人向けという干支ブレスレットがたくさん売られていた。
 さらに山の下の土産屋には「二〇三高地ストラップ」や「坂の上の雲Tシャツ」などが売られていた。ちょうどNHK司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』をドラマ化していたこともあり、旅順はちょっとしたバブルに沸いていたのだ。(p141~142)

もうひとつこういうのも。作者さんが2011年に中国を旅した時の記録ですが、100年後の旅順はどうなってるんでしょうねえ。