賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

「楽園」第2号を読む。

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その先の未来へ。次号さらに――林家志弦――参戦!!


こう来たか、ここで林家志弦を動かしたかっ!

ちいいっ。この記事を書いてる時には、 林家志弦の名は、かすりともしなかったぜ。不覚過ぎて泣きそう。
思えば、「楽園」は百合作品ウェルカムの誌風ですし、楽園に描いて欲しい人材といったら、まさにこの人ってカンジじゃないですか。>林家志弦
なんで俺は思いつかなかったんだあ~っ! オレのバカバカ!!

と、いきなり自虐的な賽の目です、こんばんわ。
いやあ、しかしやられました。創刊号で期待の新人(売野機子)を前面に押し出し、2号では意表をついたマンガ家さんを起用し(沙村広明鶴田謙二)、3号で、ど本命のマンガ家さんを繰り出す。お美事! お美事にございます

年3回の刊行という、これは非常にハンデとなる刊行ペースなのですが、それを逆手にとって(刊行ペースが遅いということは、締め切りが非常に長い)、普通なら忙しい、もしくは遅筆なマンガ家さんにも原稿をお願いすることが出来ますし、長らく待たされる読者に対しては、WEBコミックを提供することでフォローする。と、雑誌製作者側の意図というか戦略というか、そういうのがとても良く分かりますので、応援し甲斐がありますよ。

巻末のページで、編集者の言葉が載ってましたが、

この本を始めるに際して何よりも作りたかったのは、一見、繋がりの無い個々の作品が、一堂に会することで其々も全体もより輝く、という「『雑誌』特有の魅力を深化させた場所」でした。

とあり、よく考えて雑誌を作ってるなあと思います。好きなマンガ家さん単行本を読みあさるというのも、大いなる快楽ですが、色々な個性を持ったマンガ家さんの作品をまとめて読むというのも、実に楽しいものです。新進気鋭の新人さんがいて、宇仁田ゆみシギサワカヤ日坂水柯がまとめて読めて、林家志弦二宮ひかるが一緒に読めて・・・なんだ、ただの神雑誌か。


ということで、感想に入りたいと思いますが、今回は冒頭の文句が「伊勢物語」(第六十九段)から。

君や来し我や行きけむおもほえず
夢かうつつか寝てか覚めてか

おそらく、下の句が主眼ではないかと思われますが、前回のフラナリー・オコナーといい、勉強になるなあ。


・遠い日のBOY(売野機子
最初、小松左京の「痩せ我慢の系譜」みたいな話なのかと思っていたら、全然違う展開だったでござるの巻。
相変わらず、キャラクターを魅力的に描く手腕は水際立ったものがありますが、完成度は今ひとつ。前回の「薔薇だって書けるよ」が高すぎなんだよな。この作者さんには、どうしてもあの完成度を期待してしまいます。
そういう先入観なしに読めば、充分面白く読める読切でした。


・コレクターズ(西UKO)
当たり前の話っちゃあ話なんですが、4コマとして、ちゃんとオチがついているのはエラいなと。
ほら、ストーリー系の4コマって、なんかオチをあんまり付けないじゃないですか。そういうのあんま好きじゃないんだよなあ。
この作品では、きちんとオチで笑えるようにしてますので、4コマ作品としてちゃんと楽しめます。最後のページが、少々エッチなオチだったのも、またよし!


・ノミノ(宇仁田ゆみ
確かこの雑誌はオール読切作品という触れ込みだったと思うのですが、余裕で前回の続きが始まりましたよ。
でも、この幼馴染の女の子が可愛いので、全然問題なし!
「神様・・・俺に奇特な女子をありがとう…!(つーか、いっかいチューさせろ!)」とか、ここらへんは宇仁田ゆみの真骨頂だなあ。そらチューのひとつもしたくなりますわ。


・想いの欠片(竹宮ジン)
こちらも前回の続き。ヒロインさんの過去話。
初めて好きになった同性の女性が、実はとんだビッチだったというお話。オゥSH*T。美人さんだけに、余計腹が立ちますな。その分、喫茶店のお姉さんの優しさが際立つのですが、あざといなあ、もう。


・乙女ループ(鬼龍駿河
今回も「何にだったら覚えるのだろう?」と頬を染めて考える委員長がかわいくて満足しました。いかん、すっかり委員長属性が身に付いてしまった。ヒロインさんのダメダメっぷりにも萌えるんですけどね。
いつも通りのまったりしたお話で楽しめましたが、いささか絵が荒れ気味な点が残念なところ。
せっかく、味のあるいい絵を描けるのですから、もったいないので頑張ってもう少しだけ丁寧に仕上げてもらえたらなと、個人的に希望します。


・ディアティア(かずまこを)
前回に引き続き、ヒロインさんが面倒な性格で良いですね。
優しくて不器用な男の子と、一途で頑なな女の子の、前途多難な恋模様」と書いてますが、まさにその通り過ぎてて面白いじゃないか。こういう面倒くさい恋愛話は好きだなあ。
たくさん鍵を持っているのだけれど、なかなか合う鍵穴が見つからなくって、ガチャガチャと合う鍵を探してるような、そんなお話が好きです。この二人の未来は本当に前途多難そうで、今後の展開が楽しみであります。


・かまくりあん沙村広明
存外に、普通のお話で、ホッとしたような、ガッカリしたような・・・
スコップで叩かれ続けて痣だらけになった女性の背中が描かれたコマだけが、作者の性癖の一端をのぞかせてましたね。普通に良いお話でした。


・GAME OVER(水谷フーカ
お話自体は良いと思うのですが、絵が雑なのが残念。西UKOさんくらいの絵が描ければ、印象も変わってくると思うのですが。女性のマンガ家さんは、時々とんでもない絵を平気で載せてくるようなコトがありますから恐ろしいです(冬目景水無瀬カーとか)。
それはともかく、セクシーな女性として描かれているはずのヒロインさんが、ちっともセクシーに見えないというのは、マンガのせいなのか、ワタシの想像力が貧困なゆえなのか、ちょっと判断がつかないので、ワタシも精進しますです、はい。


・レセプタクル(黒咲練導
二度目ともなると、さすがに動じなくなってくる。聖闘士に同じ技は通じないのですよ。
なにはともあれ、ストップ・ザ・奇乳。これは約束な。


・ろみちゃんの恋、かな?(武田春人)
うん、この人のなら、絵の荒さは気にならないな。
WEBで散々目にしてるからだろうか? しょせんは慣れの問題か?
普通に会話のテンポが良く、楽しく読めますので、絵の荒さががそんなに気にならないということなのだと思っとこう。
鬼龍駿河さんと、この人の作品が載っていれば、こっち方面は万全だなっ。


・木曜日のサラハン(中村明日美子
むう、前回の続きじゃなかったのか。あの野球少女はモロにツボに来たのですが。
今回はラブな要素がまったくなく、少女マンガともいえないようなお話でした。サラリーマン物?
少し意表を突かれました。どう展開していくんだろうって、かなり戸惑いましたよ。
前回に比べると、パワーダウンの印象がありましたが、楽園くん(仮)のコレで、すべてチャラになりましたよ。まあキモチいいけどさあ。やらしい話? 違います


漱石先生の画(竹田昼)
この作品も、少女マンガというくくりには入らない作品だよなあ。面白いからいいけど。
前回といい、今回といい、この作品は「死」がよく描かれてますね。百閒の漱石に対する傾倒ぶりが面白かったです。


・誰にも言えない(シギサワカヤ
シギサワカヤの、こういう系統のお話は、あまり好きではなかったりする。とりあえず男の方は殴る!


・パルファン(西UKO)
う~む、個人的にこの人の作品は4コマの方が好きだなあ。これはこれで悪くないですけど。


・すきなひと(日坂水柯
姉のおっぱいに吸いついてくる、困った妹さんが登場。こう書くとなんか凄いな。
メガネっ娘も登場したことで、いよいよターボがかかってきたカンジで、楽しく読めますね。この人のすれ違い気味の恋愛模様は、やっぱいいなあ。


・レセプタクルおまけ(黒咲練導
こういうノリなら、全然オッケーですね。
だが、なにはともあれ、ストップ・ザ・奇(ry


・未明のGIRL(売野機子
アンソロジーと言いますか、ぶっちゃけページ埋めだよね?
でも売野機子さんの作品がまた読めたから問題ないっす。
ページの随所に手抜き的な部分が垣間見られますが(あの見開きはないわ~)、だらだらした女の子同士の会話が面白かったので、まあよし。しかしこの雑誌は、なにかしら百合要素を盛り込まないといけない不文律でもあるのでしょうか。「ディアティア」でも、なにげに女の子同士で腕を組んでましたし。あんまり自然に描いてあるから、最初読んだ時は余裕で見逃しましたよ。


・ひたひた(鶴田謙二
もしや落としたかと思いきや、ちゃんと載ってましたよ、8ページ。題字が二宮ひかるというのも、ありがたいんだがなんだか分からないぞ。
なんかよー分からんお話でしたが、確かに二宮ひかるが描いても、そんなに不思議はない、不思議なお話でした。鶴田謙二のマンガを読んだのって、何年振りだろう。


・オンリーワン(二宮ひかる
アワーズでやってた「シュガーはお年頃」のアウトテイクのようなお話でした。
違うところは、こちらはオトコ視点で描かれてるということと、そのオトコがちゃんとエッチできたということか。どちらもオトコ的にありがたい相違点です。「シュガーはお年頃」は、色々不満がたまったなあ。
ワケが分からないキャラをワケの分かるオトコ視点で描いてくれると、非常に分かりやすくなるなと。当たり前か。



第2号も面白かったのですが、やはり創刊号の爆発力に比べると、今回はおとなしめだったかなという印象がありました。次号(6月発売予定)は、林家志弦さんの新作も含めて、更なるパワーアップを期待しております。