賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

「シュトヘル」(伊藤悠)を2巻まで読む

イメージ 1


なあ、「シュトヘル」って、これはもしかして傑作じゃないか?
こんにちわ、23日にこの記事を更新していたものの、途中でテンションがダダ下がりになってしまった賽の目です。ポリシックスが・・・(泣)

それはまた後で書くとして、こんな年の瀬になって、こんな面白いマンガを読めるとは夢にも思っちゃいなかったワケですよ。このマンガがすごい!2010」は「シュトヘル」に決定ね!・・・1位は「バクマン」ですか、そうですか。ちなみにワタシもこの1位作品は目を通しましたが、すごいと思ったところはひとつもありませんでした

なんて荒みモードに入ってる場合じゃないです。今年の後半は「皇国の守護者」ばかり読んでたせいかもしれませんが、伊藤悠さんのオリジナル新作、「シュトヘル」も大変面白く読ませていただきました。この人の絵は、やはり良いなあ。

モンゴルに復讐を誓う西夏国(タングート)の女の子(シュトヘル)が主人公のお話なのですが、元々は健気な女の子なのに、こういう凶悪な表情をしちゃうところがイイですね。この二人が同じキャラとはとても思えません。
こういった、女性マンガ家ならではの繊細な人物描写が実に秀逸で、こう描くしかない!って言うドンピシャリ感がなんともたまりません。ぐいぐいと作品世界に引き込まれる、そんな印象的な表情を見せてくれます。
こういう絵となると、冬目景というマンガ家さんが天下一品だと個人的に思っておりますが、伊藤悠さんも負けてないと思います。いやあ、マンガは絵だねえ(当たり前だ)。

と書くと、絵だけ褒めてるみたいなのでなんなんですが、勿論ストーリーも素晴らしいです。と言いますか、「歴史モノ」、「健気な女の子」、「ビルドゥングス・ロマン」と、大好物なモノが各種取り揃えられておりまして、これはもうワタシのために描かれたものではないかと!(いやいや)

もう一人のメインキャラのユルールという男の子も、古き良き少年マンガの主人公かと見紛うばかりの、まっすぐな気性のキャラクターで、こちらも魅力的です。あまりの真っ直ぐさにアルファルドが心の中でツッコミを入れちゃってるのが面白いです。た、大変だー。もっとも父親がチンギス・カンだそうですので、今後キャラが激変する可能性もありますが、そういった危うさも含めて魅力的であります。

おまえの命はわたしのものだ」と言い放つシュトヘルの言葉が、なにやら「ヨルムンガンド」(高橋慶太郎)のココを思い出させますが、「ヨルムンガンド」(世界蛇)に見込まれたヨナ君といい、シュトヘル(悪霊)にとり憑かれたユルール君といい、みなさん色々と大変ですねえ。まあ頑張れ男の子!ということで(笑)。ついでに「デウスXマキナ」(烏丸渡)のルーク君にも頑張ってもらいたいところですが、ええと、ボクはショタじゃないですよ?

第壱話が「さあ、長い話をはじめよう」と常套ながら、物語好きにとってはたまらない引きで終わってまして、この長い話の後で、恐らく本編と思われる、「成都への旅」が始まるのだと思うと、三国志的に興奮してきます(笑)。そういえば、曹操の墓が発見されたそうですね。真偽は疑わしいようですが、こちらも興奮しますね。

それはさておき、この作品では、文字の大切さや素晴らしさを描写するシーンが随所に見られ(「あしたわたしが死んでも、消えないのか・・・?」は名シーン)、それにいちいち感動してしまう自分がいます。「忘れない」ということは去りゆく者への最大の敬意であり、文字はそのためにあるのだなあと。「言葉は存在の住処である」ってヤツですね(違います)。

1巻のおまけマンガで、インタビューでヌードを連発して「シュトヘル」をアピールしていた伊藤センセイが描かれていましたが、大丈夫です。そのおヌードには特に感心しませんでしたから。そういうお色気は、この作品の魅力とは、あまり関係ないっす!

そんな必死な伊藤悠が見られるのはこちらなのですが、そのインタビューで、「皇国の守護者」の主人公のキャラが、原作とマンガ版とでは異なっているという指摘があり、それにはまったく同感しました。
原作の方を、当然のように伊藤悠ヴァージョンの主人公キャラを思い浮かべつつ読んでいたのですが、序盤はともかく、5巻以降からは、かなり違和感がありました。もうこれは平野耕太が描けばいいんじゃないかというくらいのキ○○イぶりでしたが、8巻ではまさにその平野耕太イラストを担当していてのは笑いました。

それはともかく、「皇国の守護者」のマンガ版の4巻で、原作にないセリフ「貴様らはどうせすぐ死ぬのに、なぜまだ殺すんだ」があるのですが、これは「シュトヘル」にも引き継がれたテーマのように思いました。この作者さんの主調低音なのではないかと。どうあっても運命にあらがう精神。伊藤悠さんはきっと「蒼天航路」の馬超が好きに違いない(笑)

と、まだ2巻までしか出ていないのですが、絵の素晴らしさといい、お話の素晴らしさといい、冬目景の「羊のうた」にも匹敵する作品になるんじゃないかと、今から非常に期待しております。年末ですし、あえてこう言わせてください、このマンガはすごい!(笑)