賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

とりとめのない話3(本当のことはひとつじゃない)

昔、とあるサイトでの、U2のレビューを拝見した時の話である。

基本的に好意的なレビューで、ほとんど異論はなかったのであるが、ただ1点、冒頭のボノさんのスター気取りについてのコメントがとても気になった。今でも気になっている。


 ゲストとして司会の久米宏の横に座ったボノは、いきなり足を上げるとドッカとテーブルの上にのせ、ブーツの底をカメラに向けました。まあ、カメラに唾を吐いたり、放送禁止用語を連発することに比べればささやかな行為かもしれません。それはマスコミに対し「俺はあんたらの思い通りにはならないぜ!」という意思表示だったのかもしれません。その点では、30すぎてなお、そういう行動をとるぐらいでないと「ロック・ミュージシャン」とは呼べないぜ、ということも言えるかもしれません。


これだけだと、ボノさんが単なる頭の悪い子ちゃんでしかないが、はて、あの時は、そういうシチュエーションでしたっけ?
ワタシも当時ビデオに録画して3回くらい観たものであるが、そういう話ではなかったと思う。おっかしいなあ。以下、ワタシの記憶による「ボノさんテーブルにドッカリ足のせ事件」の顛末を想起してみたいと思う。

あのテレビ出演は確か、ボノさんが時間ギリギリにテレビ局に来たらしく、久米宏が2回くらい「もう来ないかと思った」と嫌味ったらしく言ってたのをまず覚えている。

それから、コメンテーターらしき金髪の人がボノさんに、「あなたは誠実な人だ」と面と向かって相当に面映い発言をして、「なにを今さら」と軽く鼻白む思いをして観ていたのだが、その時だ、通訳の人に訳してもらったボノさんが、ニヤリと笑って、テーブルの上にドカッと足を乗っけたのは。


どうだい、俺って誠実なヤツだろ?


と言わんばかりの態度に、これまでの番組進行を白々しい思いで観ていたワタシは(あの時のテレビ出演は、もっとU2に詳しい人も呼ぶべきだったと思う)、ひっくり返って爆笑してしまった。そう来たかあ。

結局、あのテレビ出演で印象に残っているのは、このボノさんの見事な“切り返し”だけだったりするのだが、同じ「印象深いシーン」でも、上記のサイトの人とは、相当な隔たりである。

そもそも一体、他人から「あなたは誠実な人ですね」と言われた場合、なんと返答すれば良いのだろうか?
「YES」?「NO」? どちらもよろしくない。返答しかねる問答を仕掛けることは、日本人的に「失礼」な行為に該当する。こんな失礼な発言をしてしまって、どうするつもりなんだろうと思った矢先にボノさんの「足乗せ」である。
あの思い切った行為によって、コメンテーターの礼儀をわきまえない、ぶしつけな発言を一瞬にしてチャラにしてしまった。見事だ。

ただ、例えばラーメン屋かなんかで、よく音を聞きとれない状況でニュースステーションを観ていたオッチャンは、「おいおい、妙なサングラスをかけた外人が、いきなりテーブルに足を乗っけやがったぜ、アホだなアイツは」という風に思ってしまうだろうなあとは思う。そういう意味では軽率だったかもしれない。

ボノさんがテーブルの上に足を乗せた」という事実はひとつであるが、同じ事実に対して、こんなにも違う印象を持ってしまう。事実はひとつでも、本当のことはひとつじゃないという、そんなお話。


続くかも・・・(本当は「歴史的事実とは何か」という記事の前フリにしようかと思ってたけど、めちゃくちゃ話が面倒なコトになってきたのでやめたでござるの巻)