賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

Window In The Skiesを聴きながら

「無条件の信頼のうちに生まれる愛の完全な幸福は、疑い深い、悪意を持った、不機嫌な人間より他の人間に与えられた事があるだろうか。惟うにこういう人間達は、愛の幸福に面して、法外な、信じた事もなければ信ずべくもない、自分の魂の例外を味わうのだ。その他一切の彼等の表裏の生活とは、はっきり区別された、あの無辺際な夢みる様な感覚が、或る日彼等を襲うのである。貴い謎か奇蹟の様だ。金色の光に溢れ、絵にも言葉にも尽せない。無条件の信頼は、人を沈黙させる、いや懊悩も憂鬱も、この幸福の沈黙に包まれてある。だから、そういう幸福感に圧倒された魂は、他の凡ての善良な魂よりも、音楽に感謝を抱くのが常である。彼等は音楽を通じさながら色彩ある煙を透す様に、自らの愛を、言わば一と際遠く、深く、軽やかに、見、又聞くのだ。音楽は、彼等には、自らの異常な状態を静観し、一種の疎遠と安堵の感を以って、初めてその眺めに接し得る唯一の方法である。すべて愛するものは音楽を聞いて思う、これは私の事だ、私の代りに語っているのだ、音楽は何もかも知っている、と」(『ニイチェ雑感』小林秀雄



いえ、あの、音楽っていいなあって。