賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

ハウイーB(p284)

(歌って)「いつ再び君に会えるかな? ディディディディ……/いつ大事な時間を共有できるかな?」。喪失についての歌だ。あの曲(天使のささやき/When Will I See You Again)を聴いたら君も涙を流すかもしれないよ。とても奇妙ないきさつがある。
一九九七年八月にポップマート・ツアーで僕らはニュルンベルグで演奏した。あそこにある会場はヒトラーが彼の将軍たちとともに埋葬されることになっていた場所でね。区画整理されていて、スタジアム、ツェッペリンフィールドがあり、そこは第三帝国と関係がある。(建築家でナチスの政治家でもあった)アルベルト・シュペーアが設計した建物だ。だから、僕らがそこで演奏することに幾らかの論議もあった。こう思ったのを覚えている。「いや、僕らは建物なんか絶対に恐れるべきじゃない。もし人びとがそんなに恐れるなら、そんなものピンクに塗るか何かしてやれ」とね。親友のハウイーBがDJをやっていた。彼はU2をプロデュースして、僕らと一緒にツアーもしていたからね。ただ、彼はユダヤ人だから、あそこでDJすることにとても神経質になっていた。彼は言ったよ。「やりたいのかどうか、気持ちがはっきりしないんだ」と。でも、僕は言ってあげた。「やりたくないなら、やらなくてもいいよ」。すると、彼はステージから出ていって、自分のセットをスリー・ディグリーズの<天使のささやき>から始めたんだ。あの陽気なジャズマンが頬に涙を流しているのを見るのは、ただただ驚くべきことだったね。悲劇から何十年も経ったその場所で、亡くなった人たちの存在を感じながら、自分の祖先たちを追悼しているんだ。僕はこの曲が、実際に悪魔を追い払っているのを感じたよ。
(ため息をついて)だからさ、こういったことは絶対に大きすぎる尺度で考えるべきじゃないと思う。こういった人たちには家族がいて、誰かの姉妹、兄弟、おじさんなんだ。(284ページ)


「ボノ インタヴューズ」の中で、もっとも心を動かされた箇所。
だから長文でも許して(笑)