賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

思ひ出の曲 第1回 「A Day Without Me」

この曲は、『BOY』に収録された正規ヴァージョンよりも、ボノをして「リフィー川を渡るオコンネル通りの橋から飛びこみたい」と言わしめた稚拙なデモ・ヴァージョンの方に思い入れがあったりする。

確かに、未熟といえばこれほど未熟なものはなく、スティーヴ・リリィホワイトによって、見事にラジオ向けの曲に仕上がった正規ヴァージョンの方が断然素晴らしいのであるが、デモ・ヴァージョンは、その隙間だらけのサウンドと、ヴォーカルの奇妙なほどに明るく、剽軽な調子が、逆に「ああ、これは死を歌った曲なんだな」と、より深く実感できる。

当時、20歳そこそこであった彼らだからこそ、抽象的で、しかしながら真実味を帯びた「死」という観念を曲に乗せることができたのだと思う。