賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

チャンピオン感想の前振り

少女マンガ読んでました。


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うむ!
これで一応、タアモさんのオリジナル作品はすべて目を通したことになるのだろうか。こんだけ単行本出してるマンガ家さんに「マンガの下手な人だ」とか言うのはナシだわなあ。スミマセンっしたー!
コミックハイの掲載作品に出てきたという、「いっしょにおふろ」も面白かったのですが(すごいタイトルだ!)、個人的にイチオシは「ライフル少女」でありましょうか(このタイトルもたいがいだ!)。
タイトルだけではどんな話なんだか見当もつきませんが、いや、いたって普通の少女マンガですよ。一番ハードな内容だったのですが、この程度なら問題ないな、うん。

初単行本の「初恋ロケット」から(「ボロと小さな魔女」で泣きそうになった)、現在の「たいようのいえ」に至るまでの道程をしかと拝見させていただいたこととなりましたが、「人に歴史あり」とか、また恐ろしく陳腐な言葉が浮かんでしまうのがいとをかし。
小林秀雄の言うように、好きになった人の作品は全部読んでみるべきなのでしょうね。色んなジャンルに挑戦して色んな技法を試行錯誤して、その結果「たいようのいえ」が生まれたのだなあと、当たり前のことに感銘を受けるワタシ。

と、そんな少女マンガ三昧な中で、チャンピオンとか読んでますとね、「さくらDISCORD」(増田英二)が、これなんて別冊マーガレットな展開でして、笑いが止まらないワケですよ。超展開とかそういう問題じゃないっす。


この作品は集中連載ということで、短期に終了してしまうことが確定的な作品でありますので(なまさん、ご指摘ありがとうございます)、そこまで話を突き詰めるのかは疑問ですが、主人公に漂う空虚な雰囲気と、どうにもハッピーエンドに終わるワケないという救いのない設定も魅力的です。でも、校長先生のヅラネタとか、ギャグマンガの要素もふんだんに盛り込まれてまして、この辺のチグハグさが、今ドキだなあと思う要因ですね。


以前書いた、前作の「透明人間の作り方」での感想なのですが、このチグハグさは、「さくらDISCORD」でも健在ですね。
このチグハグさが新しいと、ワタシなんかは考えてしまいます。この前、ポール・ウェラーの新作を聴いてみたのですが、あのアルバムもまた、見事にチグハグでございました(笑)

決して意図的でなく、必然的にチグハグさを演出する、というと何がなんだか分からないのですが、こういうフリーダムさをカッコイイと思い、でもそれを意図的に見せつけるのはカッコ悪いよなあというややこしい自己意識のせめぎ合いの中で、ふんだんにブリコラージュされた様式(技法)をエンターティンメントとして惜しみなく繰り出してゆく・・・うん、書けば書くほど胡散臭い(笑)。とりあえずポール・ウェラーとかさくらDISCORDとか聴くなり読むなりしてください。

存外に、週チャンという雑誌は保守的な誌風のマンガ雑誌でして、たとえば3Starsである「ハンザスカイ」「シュガーレス」「ケルベロス」は、すべて保守的な作品と言っても良いのではないかと思いますが、その中で同時期に連載が始まった「透明人間の作り方」は、そういう保守性を突き破る新しさがあったと思います。そのせいかどうかは分かりませんが、単行本にはなってないですよ、チクショー。

ですので、「さくらDISCORD」がなにかの間違いでヒットして看板作品となり、週チャンに新しい風が吹いてネクストステージに上がってくれると嬉しいなあと思う次第であります。多分、サンデーやマガジンに「さくらDISCORD」が載ってたとしたら、これほど熱心に読んでなかったという気がします。チャンピオンに増田英二というミスマッチが、「さくらDISCORD」という異形のハイブリッド作品を生みだしたのでしょう。これだからこの紳士は止められねえ(レノマのおじさんっぽく)。

うん、今回も上手く「さくらDISCORD」の面白さを説明できなかったなっ。書きながら考えているのですが、上手くいったためしがないぜ。でも結論が分からないまま書いてる方が面白いので(どういう結論が出るのか分からないから面白いのです)、これからもこんな、とっちらかった記事を更新していきますよ、ごめんなさい。

この前の記事でも、「バチバチ」(佐藤タカヒロ)のことを書こうとして、結果的に「はじめの一歩」の話になってしまいましたが、まあ「バチバチ」という作品はチャンピオン版はじめの一歩、と考えておけばオッケーなのでしょう(オッケーなのかよ)。

自分にとって、「少年マンガ」というのは極めて自明のもので、それについてあまり考えたことがなかったのですけど、前回の記事で、「少年マンガとは?」と初めて考えてみましたところ、どうも自分にとって少年マンガとは、「約束を守る」ことらしいです。なんのこっちゃ。

 彼(山路愛山)は酒を飲まず、子供を叱らない人であった。説教めいたことを言うのは年に一度、元旦のときだけである。このときは、祖先の画像を床の間に掲げ、子供たちをその前に正座させて、このおじいさんはどんな人で、どういうことをした人だといろいろと説いて聞かせ、昔の武士は卑怯の振る舞いをするのをいちばんの恥とした、お前たちも、どんなことがあっても卑怯の振る舞いだけはするな、と教訓したのである。(小島直記「人材水脈」より)

要するに自分にとって少年マンガというのは、床の間に掲げられた祖先の画像のようなものではないかと。
無論、こういう定義は個人的なもので、それを他人に強要するのはナンセンスの極みなのですが、こういう考え方をしてる人もいるんだなあと思っていただければ(笑)
そういう定義の上で、たとえば三国志演義での桃園の誓いなんて、もろに小年マンガだと思うし、高杉晋作の「君たちに誓ひしことをわれ忘れめや」も少年マンガだなあと思ってしまいます。

ここまで定義を拡張してしまうのも、まあ無茶なのですが、それだけ自分にとって普遍的な定義だということで。
バチバチ」という作品は、今となってはほとんど絶滅危惧種な「燃え上がれ少年心」を鼓舞する作品でして、それが最終回と聞いて、ちょっとビビってるワケですよ。いやまあ、例によってチャンピオン恒例の単なるリニューアルだと思いますが。
ということで、今週のチャンピオンも楽しみです。とりあえず今は少女マンガ読んでますけどー。

香魚子さんにしても、タアモさんにしても、みんなアオハル集英社)で知ったマンガ家さんなのですが、香魚子さんは講談社タアモさんは講談社小学館と、見事に非・集英社のマンガ家さんですな。
このアオハルの傭兵部隊っぷりから、集英社ヘッドハンティング能力の高さがうかがわれるところ。まあ他社から引っ張ってくるしかないんだろうな。その集英社らしからぬアオハルの特殊っぷりは、わりと好きであります。

今回は少年マンガについて考えてみたので、次は少女マンガについて考えてみたいところです。まったくの知識不足で手も足も出ないと思いますが、いやそれより先にチャンピオンの感想を書いとけと。(笑)