賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

U2ダイアリーを全部読んだ。

ようやく、「みつどもえ」から解放されるぜ!

あえて、こっ恥ずかしい記事を書いて、「早く記事を更新しなくっちゃ~」と自分にプレッシャーをかけるぞ大作戦は、見事失敗しました賽の目です、こんばんわ。でも今週の「みつどもえ」(桜井のりお)、面白かったっす!


ということで、読了したワケですよ、U2ダイアリー。知らなかった情報が満載で、ためになり申した。これは「U2ダイアリーを読む」書庫を作成すべき。時間がないからムリっぽいけど。

個人的に、ZooTVツアーが赤字スレスレで(p171)、PopMartツアーが収益面で成功を収めてたってのが(p205)、驚きでした。ZooTVの方がヤバかったのかあ~。

この夜の観客は推定2万人。わびしい観客に向かって、ボノは「後ろの方の人たち、聞こえてる? そこのあなた方はどう?」とジョークを飛ばした。(p200)

とか、ポップマートの方が苦戦してる様子がアリアリでしたので、これは意外でした。
おカネに関して、こんな記事があるのですが、そういえば、ツアーでスポンサーがついたのって、今回が初めてですよね?
とうとう、あのU2も、スポンサーを付けないとツアーを行えないのかあと、感慨深いです。

スポンサー契約に関するぼくらの姿勢は変わっていない。
これまで常に考えてきたのは、自分たちの名声や
自分たちの仕事に対してファンが抱いてくれる好意を、
誰かに売りわたすつもりはないということだ。(p275)

これは、2004年に、U2とアップルとの関係を説明した時のエッジの言葉なのですが、U2のツアーに企業のロゴが表記されているというのは、1ファンとして複雑な心境です。苦しい台所事情は察しているつもりですが。

U2には未来の一部であって欲しいし、未来を作る一端を担ってほしい。
エレヴェイション・パートナーズに加わるというのは、
僕の人生を動かすビジネスの世界に関わるチャンスを得たということだ。
ぼくは戦力外の兵士になりたくない(p271)

ビジネスに積極的に関わるロック・スターという、新しい未来像を提示してくれたボノさんでしたが、これはつまり、「ビジネスがU2を食べる前に、U2がビジネスを食べちまったよ」を目指しているのでしょう。今回のスポンサーの件では、U2の大事な一部を喰われてしまった心境なのですが! まあこれは「肉を斬らせて骨を断つ!」ということで(笑)


この前、「ボノ・インタヴューズ」を読み返した時、一番印象的だった言葉は、「僕らはショウを行うし、ビジネスもする。でも、ショウビジネスの中にはいない。」(p232)だったのですが、一見ただの言葉遊びのように見えて(最初そう思ってました)、実はこれは存外に深い言葉なのではないかと思うようになりました。

一種のグノーシス主義とでもいうのでしょうか(笑)、積極的に関わってゆくけど、決して取り込まれることはない。攻撃的に見えるけど、実際は防衛的だ。食われる前に食ってしまえ! どうせ逃げられやしないんだから。

私は、詩人肌とか、芸術家肌だとかいう言葉を好まない。実生活で間が抜けていて、詩ではいっぱし人生が歌えるなどという詩人は、詩人でもなんでもない、詩みたいなものを書く単なる馬鹿だ」と、小林秀雄という口の悪い人が言ってますが(笑)、ボノさんも、この言葉には合意しそうな気がします。ボノさんと小林秀雄は、気質的に似通ったところがあるよなあ。


ええと、大分U2ダイアリーから離れてしまったので、本題に戻りますが、やはりVertigoツアーの記事が、大変懐かしく、思い出深かったです。このブログを立ち上げたのも、Vertigoツアーに触発されたからですからねえ。

この夜はU2ファンがショーを1つ見せてくれた。「ニュー・イヤーズ・デイ」が始まると、スタジアム中の観客が赤と白のシャツやスカーフを上に掲げ、大きなポーランドの旗を客席に作って見せたのだ。U2の歌にインスピレーションを受け、80年代初頭のポーランドの連帯運動を示したディスプレイである。バンドが驚き、感動しているのは一目瞭然だった。ボノは自分のジャケットを裏返して赤いライナーを外に見せ、観客のパフォーマンスに加わる。(p291)

あった、あった(笑)。その後も、この観客パフォーマンスが各国に広まるのですよねえ。

1日目のショーで、またファンが仕組んだイヴェントが見られた。人権ビデオが映し出されると、何千人というファンが平和を願って白い風船を高く掲げた。(p292)

この夜のショーでファンがまたディスプレイ。今回はバンドがステージに出てくると、“白い波”が起った。企画したのはファンサイトのU2.seだ。コンサートが始まる時、何千人ものファンがシャツ、タオル、その他白い物なら何でも頭の上で振ったので、ボノは思わずこう言った。「おい、今日は何があるんだ?」(p293)

一時期、各国U2ファン対抗ディスプレイ合戦の様相を呈しておりましたが(笑)、みんなノリがいいなあ。ツアーの終わりにはこんなほのぼのエピソードも。

U2が「エレヴェイション」を始めると、何千人ものファンが「THANK YOU」と書いた白いプラカードを掲げた。atuU2.com、interference.com、U2.comの各メンバーが企画、用意したものである。面食らったボノは、「違うよ、こっちが君たちにサンキューだ!!」と言い、エッジとアダムにも英語以外の言葉で「サンキュー」と言ってくれと頼んだ。(p303)

いい話ダナー。日本公演でも、なんかディスプレイしたいものだなあとか妄想してましたが、来日公演延期の事態で、そういうのが丸ごと吹っ飛びましたよ。それも今となっては良い思い出。


U2ダイアリーの最後の方ではニュー・アルバムに関しても、いくつか言及されてますね。

最近の2枚のアルバムで、ぼくらがいた場所にも、さよならする時がやってきた。
ほかに何ができるか考えたいし、次の段階に移りたい。
ぼくらがやるべきことはそれだと思うんだ。
1つのバンドでい続けるつもりだけれど、たぶんロックではなくなる。
たぶんロックはもっとハードになってかなくちゃだめだから。
でもいずれにせよ、現状にとどまるつもりはない。(p321)

2006年のボノさんのコメントですが、NLOTHが発売された今となっては、色々考えさせられるコメントです。
POPの頃から、「今度のアルバムはロックンロールになる」が、ボノさんの口グセだったような気がするのですが(笑)、今回は逆に「ロックではなくなる」って言ってるんですね。ロックンロール・コンプレックスから、ようやく解放されたということなのでしょうか?(笑)

ロッコへ行くと、ビートやリズムやアイディアがまったく違っている。つまりね、トランスミュージック現象のすべてはあの土地から来たものと言っていいんだよ。モロッコではそういう音楽が何世紀も続いてきたんだ。ドラムの音とグルーヴがずっと続いていて、聴く人を必ず恍惚状態に誘う。ほとんど英米の音楽しか聴いてこなかったぼくらのようなミュージシャンにとっちゃ、まったく新鮮で異なるルーツと影響力を持つ音楽を聴くのは信じられないほど刺激的なんだ。(p327)

このモロッコ音楽の成果は、Fezという曲に顕著に表れてますね。そっか、Fezはトランスなのか(笑)
今回、エッジのギターが、なんかちょっと大人しいなあとか思ってましたが、エッジの狙いはそういうところにあったのですねえ。あえてロック的な手法、ギターでギュ~ンなのを抑制したのですな。


と、大変面白かったU2ダイアリーなのですが、最後にもう一つ、この本の魅力を挙げますと、この本にはU2にとって具合の悪い記事も、ちゃんと載せている点があります。これは面白いわあ(笑)


ボノとエッジは、クラレンス・ホテルに隣接した4つの歴史的建造物を取り壊す許可を得た。1億5000万ユーロを投じ、「ヨーロッパで最も壮観」とボノが言うホテルに作り変えるためだ。自然保護主義者、環境保護主義者らはダブリン市議会の決定に激怒し、断固法廷で闘うと述べた。(p332)

ボノさん、ちきゅうのてきだ~!(笑) いやあ、なんともナポレオン的な強引さですな。具合悪いわ~。
例の、事務所をオランダに移した件なども、ばっちり記述してあったりして、興味深く読ませてもらいました。U2のビジネス戦略については、日本の音楽雑誌などでは、なかなか記載されたりしないので(当たり前だ)、そういうのが豊富に載ってあるのが面白いですね。ショウだけでなくビジネスもやってるU2の姿が垣間見える「U2ダイアリー」は買い、ですね!