賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

歌詞の方面からNLOTHをアプローチしてみる(前篇)

イメージ 1

ねんがんの『焔』をてにいれたぞ!

例によって、国内盤が延期になってしまいましたので、業を煮やして買っちめえやしたよ。
わーい、ライヴDVDが楽しみ~。


と、それはさておきまして、前回の皆様方のレビューに、大いに触発され、もう一度NLOTHにトライしてみようと思い、今回はこれまであまり重きを置かなかった歌詞から攻めてみようかと思います。
もとより、知識不足による解釈の間違い、また根本的に英語力がお話にならないという致命的欠点があることを承知の上での蛮行ですので(笑)、そこはご了承ください。
また、日本語訳に関しては、酔月亭さんの訳に全面的に依拠しております。酔月亭さん、ブログ復帰、おめでとうございます。


01.No Line On The Horizon

しょっぱなから、刺激的な言葉が飛び出してくる。


infinity is a great place to start(無限を出発点にするのは最高だ)

Time is irrelevant, it's not linear(時間なんて関係ない。まっすぐじゃないから)


ほとんど東洋的な手触りを感じさせる言葉が、イチ東洋人である自分を興奮させる。
You can hear the universe in her sea shells」(彼女の貝殻に耳を当ててみるといい。宇宙が聴こえる)というくだりは、ビートルズの「Julia」を思い起こさせて、その意味でも興奮します(笑)。
ちなみに歌詞はこんなカンジ

I'm hatching some plot, scheming some scheme(ぼくは何かを企てている。たくらんでいる。)

hatchにせよ、schemeにせよ、どうもあまり良い言葉では、ないみたいだ。
schemeという言葉は、Walk Onの最後の方にも出てきますね。捨て去るべきもの(You've got to leave it behind)として。
マレ通りにいる警官」というのは、どうも別の曲の歌詞からの連想らしい。「Songs Of Ascent」に収録されそうですので、何を企んでいるのかは、それ待ちですね(笑)


02.Magnificent

前作、HTDAABに収録されているAll Because Of Youの続編のような(I was born a child of grace~♪)、屈託ない自己肯定の歌詞が並べられている。この世に生まれた瞬間の産声からずっと、ぼくの声は喜びに満ちたノイズだ……

と、肯定しつつも否定的な側面、「Only love, only love can leave such a mark」(愛だけ。愛だけがこんな傷跡をつけられる)をもきちんと歌っているのはさすが。愛に比べれば、悪の加える損害はなにほどのものでもない。

Justified till we die, you and I will magnify」という言葉を、「ぼくらは死ぬまでずっと、賛美し続けるに違いない」と酔月亭さんは訳されてますが、このJustifiedという言葉は、なかなか厄介だ。

Prideにも出てくる言葉だが、(「One man come he to justify」)、Justiceという言葉が、あまり流行らない昨今ではちょっと訳しにくい。そういえばボノさん、「アフリカの貧困撲滅に取り組むのは慈善ではなく正義の問題だ」とか言って、昔エラく叩かれましたっけ。

Magnificentという言葉も、あまり聞かない言葉だ。「マグナカルタ」とか、「マグニチュード」などに連なる言葉らしいです。
「壮大さ」という意味もあるようで、magnifyは「拡大する」という風にも使えるっぽい。「ぼくらは死ぬまでずっと、拡大し続けるに違いない」。うん、いかにも、ボノさんが好みそうな言葉だ(笑)。今まで使われてこなかったのが不思議なくらい。
この曲は、間違いなく.No Line On The Horizonよりも愛されてるんだろうなあ。この間のMTVライヴでも、Magnificentは演奏しても、NLOTHは演ってくれなかったし。_| ̄|○


03.Moment of Surrender

We set ourselves on fire(ぼくらは自分たちを奮い立たせていた)
Oh God, do not deny her(神よ、彼女を責めないでください)
It's not if I believe in love(ぼくが愛を信じるかどうかではなく)
But if love believes in me(問題は愛がぼくを信じるのかどうか)
Oh, believe in me(ぼくを信じてほしい)

なんとなく、創世記におけるアダムとイブの楽園追放を想起させる一節である。
どうか、賢明さゆえにワタシを誘惑したイブを責めないでください・・・苦しいかな?(笑)

I was punching in the numbers at the ATM machine(ATMに暗証番号を打ち込んだ)
I could see in the reflection(そこに映っていたのは)
A face staring back at me(ぼくの背中を見つめる顔)

個人的に、今回の新作の中で、一番感銘を受けた個所がコレ。
自分の後ろに男が立っている。彼は誰?
なぜ、後ろに立っているのかは分かっているけど、彼が何者なのかは分からない。
彼は何者なの?

とても想像力を刺激させる歌詞だ。「I did not notice the passers-by/And they did not notice me」(そばを通り過ぎてゆく人には気づかなかったし、彼らもまたぼくに気づかなかった)。僕は何者なの? とても不思議だ。

vision of over visibilityという言葉は、ずっと以前からボノさんが温めていた言葉だということを、確か、猫村さんの記事で拝見した記憶がある。

機工魔術士」(河内和泉)というマンガによると、「網膜が視覚野に伝える外界の情報は3%」らしい。
vision of over visibility」というのは、つまりそういうことなのかな? まあ違うだろうけど(笑)、「世界の97%が不確定で曖昧な自分」の中で、どれだけ「正しく」(Justify!)生きることができるかって、大問題ですねえ。「機工魔術士」は、もう少しみんな読んでもいいと思うんだ。


04.Unknown Caller

閑話休題。鳥の鳴き声とともに、Sunshine, sunshine~♪と、冒頭歌ってるワリには、「I was lost between the midnight and the dawning」(ぼくは真夜中と夜明けの間をさまよった)と、矛盾しまくりなのですが、これは3:33という数字を出したかったからなんでしょうなあ(こちらの方のブログを参照ください)。

モーセシナイ山から、その両腕にかかえてきた石板に刻みこまれていた律法は、いわば無法者のことばで、語られていました。おまえら、殺すんじゃないぞ。盗むんじゃないぞ。不倫するんじゃないぞ。それは、およそ詩人のことばじゃない。しかし、いまいちばん必要とされているのは、詩からもっとも遠いように見える、こういう律法のことばなのではないでしょうか。(中沢新一「詩ではなく掟を」)

最後のコーラスの部分は、なんだかヤハウェの、無法者の言葉のように聞こえてきます。

Hear me, cease to speak that I may speak(聞けって。先回りすんじゃねえ)
Shush now(いいから黙りやがれ)
Then don't move or say a thing(微動だにせず、一言も喋るんじゃねえぞ)(無法者風に)

あの、過剰なまでの荘厳なサウンドは、そういうことなのかな?(笑)


05.I'll Go Crazy If I Don't Go Crazy Tonight

じっくりと訳文を読んでみると、なかなかイライラしい歌詞。
丘じゃなくて山なんだ」なのは良いのですが、他はピンと来るものが乏しい。


すべての世代が世界を変えるチャンスを持っている。
哀れみの国はきみの子どもたちに耳を傾けるだろうね。
最高に素敵なメロディは、まだ聴いたことのない歌だから。
完全なる愛はすべての恐れを駆逐するってのは本当?
愚かなことをしでかす権利はぼくのものだよ。

正直、ボノさんが何を言いたいのか、良く分かりません。
「Baby, baby, baby, I know I'm not alone」(ベイビー、自分が一人じゃないってこと、ぼくは知ってる)という歌詞も、そりゃあボノさん、アナタが一人じゃないってことは、世界中の人が知ってますよ、と答えざるを得ないです(笑)
歌詞の一節一節は面白いのですけれども、全体的に眺めると、どうも不要領なんだなあ。


Do you believe me, or are you doubting(ぼくを信じる? それとも信用できないかな)

う~ん、信用できません!(笑)

but a change of heart comes slow(でも、心の変化はゆっくりとしたものなんだ)

ワタシの心も、今ゆっくりと変化していっているんでしょうねえ。

年年歳歳花相似
歳歳年年人不同

とか漢詩を思い出してみたり。賽の目クン? なんかちょっと、意味が違いますよ?(笑)



後編に続く・・・