賽ノ目手帖Z

今年は花粉の量が少ないといいなあ

Heartland

アダム:ある時期にボノと僕は、チェロキーというジープを借りてLAからニューオリンズに向かった。ボノがナヴィゲートして、僕が運転したということになっているけれど、僕はボノのハンドルさばきを信用していなかったのさ。

ボノ:僕らはまず10号線のハイウェイを走り始めた。この道路は西海岸と東海岸を結んでいる。車でLAの外に出れば、一方のアメリカを去り、別のアメリカに入れるんだ。それは本物のアメリカ。僕が愛しているアメリカだ。僕らはジョニー・キャッシュの音楽を山ほど積み込み、ペインテッド砂漠に向かって出発し、トゥルースとコンシクェンスという街を通り抜け、ニュー・メキシコ、アリゾナ、テキサスを抜けて、テネシーに方向転換したんだ。自分たちがどこへ行こうとしているのか、正確なところは分からなかった。道すがら、行き先を決めていたのさ。冒険だったね。(203ページ)


「足のむくまま、気のむくまま、今日はここ、明日はあそこ、明後日は知らない。それが、おれたちの合言葉」(『冒険者たち』斎藤惇夫)。
旅するネズミ、ボノさんとアダム様ご一行の珍道中は、「U2 BY U2」の中でも白眉ではないかと思います。本当に旅することに憧れてたんだなあ。


ボノ:ダニエル(・ラノア)はニューオーリンズバロック様式のシャトーを持っていてね。美しい屋敷で、素晴らしい吹き抜けがあった。魅力的な場所だったよ。僕はネヴィル・ブラザーズに聞き惚れた。アーロンの歌声は天使のようだが、彼の外見はまるで悪魔のボディガードみたいだったね。ダニエル・ラノアは、世界中の誰もがこの音楽には勝てないと思ったそうだ。素晴らしくて、めまいがするほどだったよ。こんな最高の旅ができ、アダムと最高の時を過ごせた。生涯ずっと忘れないと思う。
「Heartland」はこの旅でできた曲で、僕自身とアダムについてのストーリーだ。「Mississippi and the cotton wool heat / Sixty-six - a highway speaks / Of deserts dry,of cool green valleys / Gold and silver veins,All the shining cities...Freeway, like a river cuts through this land.(ミシシッピは灼熱の綿花/66号線が語ってくれる/乾いた砂漠に緑の谷間を/金銀に輝く都会の畝を・・・河のようにこの国をフリーウェイがひた走る)」。この曲はまさにこの旅での出来事を少しずつ綴った旅日記なんだ。(204ページ)


Heartlandは、U2の曲の中でも、5本の指に入る大好きな曲なんですが、このように作曲者自身が、その曲の思いを語ってくれると、「おお~」な気持ちになりますね。ワタシはもっと観念的なイメージでこの曲を聴いてたんですけど、こんな具体的なものだったとは・・・(笑)

曲のアイディアそのものは、『焔』のレコーディングの時から出来てたそうですが、『ヨシュア』でも発表には至らず、『魂の叫び』でやっと陽の目を見ることになったワケですから、この素晴しい旅の経験が、「Heartland」完成への大きな導きとなったのでしょうね。それを思うと、Heartlandは、『焔』『ヨシュア』『ラトハム』の血脈をすべて受け継いだ最強の曲なんじゃないかって気がします(笑)

ちなみに、Heartlandは、かつて一度もライヴで演奏されたことはありません・・・_| ̄|○